■ 東建月報2012年2月号掲載
研究会の活動について「業界が直面する労働問題への対応と安全対策の推進との2つを大きな柱にしている」と、にこやかに語る。物腰が柔らかで、チームワークを大事にしている。メンバーの問題意識も共通しているから、まとまりが良い研究会である。協会のホームページに研究会のサイトを設け、活動内容も広く発信している。
「都内のエレベーターの設置・解体工事や保守点検作業で死亡事故が多発したので、昨年度は『エレベーター設置工事等における安全対策例について』を作成・刊行した。これにより自主的な労働災害防止活動に取り組む参考になればというものだ。今年度は、安全対策工夫集の第2弾として『可搬式作業台』をテーマに検討を進めている」と成果を語る。昨年12月には現場見学会も開催し、品川駅作業所での労働安全の取り組みを視察した。
「当研究会は、現場で働く従業員の方々が安全で安心して働けるように、いろいろな情報提供をしていくことが役割」と、現場への目線を大事にしている。
現場第一の信念は、長い、様々な現場経験に裏打ちされたものだ。昭和54年3月に山梨大学工学部土木工学科を卒業した。大豊建設への入社は「学生時代の野球部の先輩から、いい会社だから来いよと誘われ、入った」と。それ以来、関東を中心に橋梁下部工事、河川工事、山岳トンネル工事、シールド推進工事、鉄道工事、港湾工事と数多くの現場に従事してきた。「入社してすぐ、東関東自動車道の橋梁下部工事の現場に配属となり、橋脚のコンクリート打設がきれいに仕上がったのは嬉しかった」と振り返る。現場所長になったのは42歳で、東京都港湾局のケーソン工事の指揮をとった。いくつかの現場を経て、東京支店で5年間積算業務に就き、昨年9月に本社安全環境部長となり、同時に東京建設業協会労働安全研究会座長も務めるようになった。
「私の現場勤務でのモットーは、現場優先主義であり、常に現場を巡視して、危険や施工ミスの芽を早期に摘み取ることだった。最近の現場は、社員が少人数で書類作成に追われていて、現場に出回り作業に接する時間が少なくなっているようだ。現場は刻一刻と変化しているから、出来るだけ自分の手足と目で直接巡視してもらいたい。現場技術はそうした経験からのみ伝承されると思う」と語る。事故も、現場の工程や資機材の、生きた知識があれば防ぐことができる事例が少なくない、と残念がる。「建設業全体にも言えることだが、若年労働者の確保と育成が極めて重要な課題になっている」とも指摘する。
3・11の東日本大震災以降、被災地の現場に出向いているが、「いまだ被災地では復興が進まない状況である。がんばれ東北と日本全国から支援や応援がされているが、被災地の復興は建設産業なしに遂行できない。建設業界が一丸となって、一日も早い復旧・復興に取り組んでいかなければならない」と指摘する。
福島第一原発事故での、除染作業の試験工事現場にも出向き、慎重で綿密な人力による作業が求められ、安全面でも課題が山積しているという。「福島県内では多くの人々が避難を余儀なくされている。放射能に汚染された地域の除染作業の工事が今後発注されてくると思うが、1日も早い被災者の帰宅のためにわれわれ建設業界が頑張らなければいけない」と強い使命感に燃えている。被災地では、地元の雇用に配慮するため、施工に不慣れ労働者も入職してくるだけに、より一層、原点に返った安全教育や安全対策が求められていると警鐘も鳴らす。
趣味は「ゴルフを少々」。ちなみに姪に遠藤冴子女子プロがいるとか。「今年は17試合にエントリーしているので、応援をよろしく」とも。千葉県勝浦市在住。55歳。
労働安全研究会の皆さん | ||
副座長 | 岡口澄夫 | 清水建設(株) |
委 員 | 清水健司 | (株)ナカノフドー建設 |
森田真斗 | (株)丸二 | |
八隅竹水 | 鹿島建設(株) |