東京都が招致活動を進める2020年夏季オリンピック・パラリンピックのメーン会場としての利用を目指し、国立競技場(東京都新宿区)が建て替えられることが決まった。総工事費約1300億円を見込む国家的プロジェクトで、7月に事業主体となる日本スポーツ振興センターが新競技場の建設に向けた国際コンペの募集要項を公表。人間の英知と現代技術の総力を結集した最高のスタジアムとするため、審査委員長を務める建築家の安藤忠雄氏らが会見でコンペの開催を告知し、基本構想のデザイン案の作品提出を広く国内外に呼びかけた。

安藤氏以外ではリチャード・ロジャース、ノーマン・フォスター、内藤廣の各氏ら国内外の建築界のビッグネームのほか、鈴木博之(青山学院大学総合文化政策学部教授)、岸井隆幸(日本大学理工学部教授)、安岡正人(東京理科大学工学部教授)、小倉純二(日本サッカー協会名誉会長)、都倉俊一(作曲家、日本音楽著作権協会会長)、河野一郎(独立行政法人日本 スポーツ振興センター理事長)の各氏が審査委員となり、日本建築学会会長の和田章氏(東京工業大学名誉教授)も専門アドバイザーを務める。9月に応募登録や作品の提出を締め切り、10月から2段階による審査に入り、11月中旬には審査結果を公表する予定だ。 国際コンペのキックオフに当たり、安藤氏は「人間の英知と現代技術の総力を結集した最高の建築を実現 するため、広く世界にアイデアを募りたい。新しい時代の幕開けを告げる知性と情熱に満ちた提案を期待する」とコメント。具体的な技術的評価のポイントとして、「地球上の資源やエネルギー問題を踏まえ、環境計画や設備計画をしっかりと見ていきたい。神宮の杜全体まで見渡した提案のほか、開閉式屋根にすることで生じる芝生の管理方法なども重視したい」と述べ、 「日本は今、元気がないと言われているが、これだけの競技場を作ることができる国だということを世界に発信していく」とプロジェクトの意義を語った。

現競技場は、建築家の片山光生氏が設計を手掛け、大成建設の施工で1958年に竣工した。1964年開催の東京オリンピックのメーンスタジアムとして使用され、その後、オリンピックのレガシーとして今日まで大切にされてきた。しかし、建築から半世紀が経過していることもあり、現在では老朽化や多様化する競技の国際基準への対応などの部分で、多くの課題に直面している。

河野理事長も「内向きではなく、外に向かって事業を進める必要があると考え、設計に先立ち、デザインを公募することにした」とコンペ実施の狙いを語った。続けて、「ここ半世紀程度のスパンで見れば、ラストチャンスのプロジェクト。何かを変えるには国家的な事業が不可欠。世界に類を見ない、世界に誇れる一番のものを作る」と宣言した。

新競技場は、19年開催のラグビーワールドカップのほか、東京都が招致を目指す20年夏季オリンピックのメーン会場での使用を想定し、収容人員を現在の5万4000人から8万人規模に拡大する。延べ約29万m2規模の全天候型スタジアムにする計画で、敷地を接する日本青年館と明治公園の一部にも拡張した上で建設する。13-14年度に設計をまとめ、既存建物の解体を経て、15年10月に本体着工、19年3月の完成を目指す。