河川の維持管理に官民連携の兆しが訪れようとしている。東京都建設局は、隅田川西側沿いの飲食店を対象に「川床(かわゆか)」の社会実験を始める。河川堤防の管理用通路上部の空間を民間事業者に貸し出し、より水辺に近いロケーションで飲食を楽しめるテラス席を整備する。河川敷地の民間開放は規制緩和の先駆け的な存在となる。賃料収入を得るというスキームは公物管理の新たな形としても注目を集めそうだ。
川床は、京都・鴨川などで見られる飲食店のテラス席を河川敷地に突き出す形で設けた高床式の工作物。水面に手が届きそうなほど、水辺との一体感が味わえるテラス席は夏の風物詩になっている。
都建設局は、この隅田川版の川床を『かわてらす』と命名。水辺のにぎわい創出と地域の活性化を両立する新たな取り組みをスタートさせる。
対象は吾妻橋から厩橋下流までと、蔵前橋下流から神田川合流部までの範囲。隅田川に隣接し、2016年3月末までの実験期間中に営業または営業を予定している飲食店とする。実験店舗には、清掃や緑化といった周辺環境への配慮に加え、川床の設置や撤去に要する費用と敷地の使用料負担を求める。
隅田川版『かわてらす』は、国が定める河川敷地占用許可準則に基づく、規制緩和の先駆的な取り組みの一つ。河川管理者である同局が河川敷地の使用規制を期間限定で緩和、民間事業者が河川敷地に張り出すテラス席(川床)を整備する仕組みだ。
河川敷地の規制緩和によって賃料収入を得るという、従来にない社会実験は、水辺のにぎわいという観光振興の側面に加え、将来的には維持管理財源の捻出・確保につながる可能性もある。実現すれば、公物管理に商業的な発想を織り交ぜた、いわば〝稼ぐ行政〞の形が見えてくる。