世界一コンパクトな大会を実現
2020年東京オリンピック・パラリンピック大会計画の最大の特長は、「世界一コンパクトな大会」の実現だ。 選手村(有明地区に1万7000人が宿泊可能)から半径8㎞圏内に、東京圏の33競技会場のうち28会場(85%)が収まる。世界各国からの取材陣の拠点となる「国際 放送センター・メーンプレスセンター」も、この圏内にある日本最大の国際会議・展示施設である東京ビッグサイトに設置される。大会関係者、競技者、取材者 などのスムーズな動線を確保することで、必要以上の渋滞を防ぎ、結果的に都民の日常生活を妨げない。
大会の全体コンセプトではさらに、選手村を中心に東側の臨海部を、発展する東京の象徴の「東京ベイゾーン」として、西側を1964年東京オリンピック大会 施設が数多く残るレガシー(遺産)が現存する「ヘリテッジゾーン」として、伝統・文化から現代に至るまでの東京の魅力を体験できるとした。
友好・平和、感謝の「桜」をモチーフに五輪カラーと江戸むらさきが融合
色とりどりの桜を形どった、「2020年オリンピック・パラリンピック招致活動」のロゴは、さまざまな印刷物や、ピンバッジとして街中でも広がっている。
ロゴの花びらは、日本がこれまでに、友好・平和の証として、感謝の気持ちとして世界各地に贈られた、「桜」がモチーフ。鮮やかな色は、 オリンピックカラーの、赤、青、黄、緑の4色に、東京を表す色として「江戸むらさき」を使った五輪の5色で、花びらの一枚ずつが世界をつなぐ一つの大きな輪と なるように、桜のリースをイメージしている。
ロゴのデザインは、2011年11月に、日本オリンピック委員会の公募から、女子美術大4年(当時)の島峰藍(しまみねあい)さんの作品に決定し制作された。
競技会場の約4割は、既存施設を使い、施設の整備にかかる費用と環境への負荷を極力抑える。新設する競技場は大会後も継続して、スポー ツや文化の拠点とすることで、都民や国民の共有財産になる。
このほか、世界中に支援の輪が広がった2011年3月の東日本大震災からの復興支援として、岩手・宮城・福島の3県と協力して、宮城でのサッカー予選開催や東北での聖火リレーなども検討している。
さらに、世界のなかで日本が先進的な取り組みと技術を持っている、環境配慮・技術についても、自然エネルギーや再生可能エネルギーの積極利用や、カーボ ンオフセット(二酸化炭素排出の相殺)などの取り組みを採用して、環境負荷低減大会を強調する。
地震・津波に対しても、予定競技会場は全て最新の耐震基準に基づいて耐震性を確保する。東京湾は地形自体、津波が入りにくく、防災対策も万全とした。
選手村以外の宿泊施設についても、選手村から半径10キロ圏内に約8万7000室、半径50キロ圏内では14万室と、他候補都市と比較して圧倒的なホテルインフラが あるほか、IOC が要求する4万室保証に対してもすでに4万6000室以上の保証を取得している。
このほか、1日2570万人を輸送する鉄道網など発達した公共交通機関や、聖路加国際や都立墨東、都立広尾病院など10カ所のオリンピック病院や最新医療設 備などの医療サービス、約3000億円の大会組織委員会の予算や東京都・日本政府による財政保証といった財政的裏付けなどを強みにして、今後も開催都市としての東京の優位性を訴えていく方針だ。
国際コンペ ハディド氏提案を採用
2020年オリンピック・パラリンピックが東京で開催される場合、メーンスタジアムとして予定されているのが、イラン出身で英国在住の女性建築家、ザハ・ハディド氏のデザインによる「新国立競技場」だ。
ハディド氏は、新国立競技場の基本構想国際デザイン・コンクールで、斬新な流線型のアーチ状主架構や、自然採光・自然換気・太陽光発電・地中熱利用・中水 や雨水を使ったクーリングシステムなどを提案した。
2012年11月に開かれた選考結果の会見で、ハディド氏作品を最優秀賞に選定した理由について、審査委員長を務めた建築家の安藤忠雄氏は、ハディド氏提案 のデザインについて「世界最高の日本の建設技術の粋を尽くせば乗り越えられる」とし、選定された理由の一つに、日本の技術水準の高さを世界にアピールする意味で、技術的挑戦に値する難易度の高さがあると明 らかにした。
ハディド氏は3月19日、日本スポーツ振興センター(河野一郎理事長)が開いた、「新国立競技場基本構想国際デザイン・コンクール」表彰式で、「絶え間 なく人が流れるような建築を目指した」としたうえで、構造や幕屋根など際だつ空間の高揚感や臨場感、一体感による圧倒的な造形性など最優秀作品として評価された内容について、デザイン画をスライドで見せ ながら説明した。さらに、「東京への招致が決まれば、前回のロンドン以上の大会が開催できると思う」と話した。
河野理事長からトロフィーを受け取るハディド氏 | 作品模型を前に河野理事長、安藤忠雄審査委員長らと 記念撮影するハディド氏 |
国際コンペには、国内外から46点の応募(国内12、海外34)があり、2012年11月にハディド氏作品を最優秀賞に決めた。
総工費1300億円のビッグプロジェクト
新国立競技場は、現在の国立競技場を取り壊し周辺地域も取り込んで、収容人数8万人の競技場を建設するもので、総工費は約1300億円を予定するビッグプ ロジェクト。2015年10月に着工し、19年3月の完成をめざす。すでに開催が決定している「2019年ラグビーワールドカップ」のメーンスタジアムとして活用 されるが、翌年の2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定すれば、日本の建設・環境技術の粋を集めた、世界最先端の日本の技術PR が2年連 続して国際的スポーツの祭典で実現することになる。
設計は今月に決定
国立競技場は2014年7月に取り壊し
「新国立競技場」の設計者は、5月中に決まる。日本スポーツ振興センターがWTO(世界貿易機関)対象の「新国立競技場フレームワーク設計業務」の公 募型プロポーザルを公告しており、今月20日に選定結果を公表する予定だ。プロポーザルでは、温室効果ガスなどの排出削減といった環境配慮も重視する ほか、コスト縮減提案も求めた。
新国立競技場建設に伴って、既存施設の国立競技場や日本スポーツセンター本部、日本青年館が取り壊される。解体期間は2014年7月から15年3月で、そ の後建設工事に着手、19年3月には、日本の建設・環境技術の粋を集めた「新国立競技場」がお目見えする。
1964年の東京オリンピックのメーンスタジアムとして、聖火をともし続け、国際大会会場として、日本の主要競技場だった「国立競技場」とその周辺地 域はあと2年で見納めとなる。
現地視察終え、意気込み新たに
3月、IOC(国際オリンピック委員会)評価委員会(クレッグ・リーディー委員長)による現地視察が 東京(4日~7日)、マドリード(18日~21日)、イスタンブール(24日~27日)で実施された。
立候補都市の先陣を切って臨む形となった東京は、安倍晋三首相を筆頭に政界や経済界が招致委員会を強 力にサポート。4日間で予定していた全日程を滞りなく終えた。
初日の4日には、IOC評価委員会メンバーが皇太子殿下を表敬訪問した。前回、16年五輪の招致活動では実現しなかったIOC評価委員会の皇室へのご接見を得ることがかなった。
プレゼンテーション |
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東京ビッグサイトでのウェルカムライン(3月6日) |
招致委員会の会長を務める猪瀬直樹知事は、「東京にはスポーツ好きの知事がいる」と公言するように自らが先頭に立って招致実現を猛アピール。初日の有明 テニスの森の会場視察で車いすテニスの国枝慎吾選手(パラリンピアン)とのプレーを披露する一幕もあった。最終日7日の公式会見でも「これからが正念場。 われわれには東京開催を実現する大きな義務がある」と東京開催へ熱い意気込みを語った。
竹田恆和招致委員会理事長(JOC会長)も「(4日間を振り返り)十分に満足いく内容だった。開催都市の決定までオールジャパンで一枚岩になって突き進 んでいきたい」と述べた。
全日程終了後に会見した、IOC評価委員会のリーディー委員長は「(視察を通して)東京の招致委員会がプロフェッショナルな努力をしたことがうかがえ る。招致への熱意が伝わってきた。また、政府や経済界など幅広いサポートがあることも知った」と語る。
支持率も77%まで上昇
2020年オリンピック・パラリンピック招致への、東京都内在住者の支持率も上昇している。この1年間で、「東京開催に賛成する」支 持率は20ポイト程度上昇するなど、住民の関心と期待感も確実に高まった。
招致活動を行っている、特定非営利活動法人東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会(理事長・竹田恆和公益財団法人日本オ リンピック委員会会長)」は3月末、3月4日から7日までの日程で行われたIOC評価委員会による東京視察後の招致支持率調査結果を公表した。
支持率は「賛成」が77% と、今年1月に行った立候補ファイル提出後に行った前回調査と比べ支持率は4ポイント上昇した。昨年夏のロンドン 大会前に行った7月調査の「賛成」支持率は58% で、この1年弱で支持率は20ポイント程度上昇した格好となった。
一方、「反対」は今年3月調査で9%と調査ごとに減少しており、住民の大会招致への期待と関心は高まっていることを示した。IOCが 行っている支持率調査も、招致委員会調査と同様、「賛成」支持率がこの1年間で20ポイント以上上昇している。
招致委員会が行った3月調査は、3月9日から20日までの期間で、東京23区、多摩地域・島しょ部を対象に、18歳以上の男女(サンプル数400)を対象にして いる。