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参考資料2

東京の魅力(東京改造、再編に関する各種報告)

東京改造の系譜

江戸から東京と名前が変わって、首都の三大改革プランといわれたのが銀座レンガ街計画、官庁集中計画、東京市区改正計画で、いずれも明治時代に計画されました。それらの計画の根底にあったのは、封建時代の江戸の名残りを払拭して、西洋風のマチづくりをしようという考えでした。
やがて東京は江戸時代には放置されていた地域も開発されました。
西欧の都市には旧市街(オールドタウン)という一区画があり、近代以前の町並みが残り保存されていますが、東京は有名寺院などを除けば、江戸時代の建造物は壊され、近世以前のマチ並みは払拭されて、西洋風の建物、町並みをつくることが目標とされました。もっとも木造のマチ並みでは西洋の都市のような保存は困難なことでした。
 ひたすら欧米のいろいろな手法と制度を研究して、西洋風の都市づくりが進められましたが、都市としての基盤は脆弱でした。そこで大正9年(1920)、近代都市として再建させるためにアメリカから識者が招かれました。
そのあとで関東大震災が東京を襲いました。
関東大震災後は災害に強い帝都復興計画がたてられましたが、財政難もあり、すべては実現しませんでした。復興計画による東京が出現してから十余年後、数次におよぶ空襲が東京を襲い、東京は特に都心部と下町が壊滅しました。
太平洋戦争が終わり、戦災復興計画がたてられ、国の予算が投じられて昭和34年(1959)に完了しました。
以上のように、東京は、東京遷都による首都としての建設、関東大震災による復興事業、戦災復興事業と三つを経て、高度経済成長の時期を迎えます。
日本は大きなイベントを契機に改造がおこなわれるということがあり、東京はオリンピックにより都心の改造が進められました。このころから東京一極集中と過密化が問題となりました。都市からいえば、建設と破壊とが同時に進められたころでもありました。
東京オリンピックの前後、東京には次のような問題が起こりました。
経済的には欧米の水準に達しましたが、都市についてはそうではないのが日本でした。

昭和37年(1962)= 東京にスモッグが続く
昭和44年(1969)= 東京都、建設騒音の規制地域を告示する
昭和45年(1970)= 東京都、初の光化学スモッグ警報を発令する
マンションの日照問題で反対運動起こる
昭和46年(1971)= 東京都、ごみ戦争を宣言
昭和47年(1972)= 国連、東京の物価は世界一と発表する
昭和49年(1974)= 環状七号線自動車公害対策会議が設置される
昭和50年(1975)= 都内の公害病認定患者、2,000人を越す
昭和59年(1984)= 世田谷区で地下通信ケーブル火災が発生する

(東京建設業協会:『東京建設年表』平成十年より)

 東京への人口と企業の集中の結果、交通量が増加し道路の混雑が慢性化し、廃棄物の処理など都市基盤の整備の遅れが目立ちました。
このような東京をどのように改良すべきか、遷都・分都も含めて、東京の改造論が、国・東京都・学者・政治家・評論家などから起こりました(巻末掲載「東京改造のための提言リスト」参照)。
 それらの東京改造論の論調のなかに、「東京の魅力」というキーワードが登場するのは、平成8年の『東京の魅力と活力−−アジア諸都市から見た東京をめぐって』(東京都)が最初です。「魅力」とは自分が他者からどのように見られているかを示すものであり、それは東京が国際化のなかにあることを示すものでもありました。

『東京の魅力と活力−−アジア諸都市から見た東京をめぐって』

本報告書の目的は、シンガポール、香港、台北、ソウル、上海、北京など、東京に接近しつつあるアジアの諸都市の行政・有識者および市民に対してヒヤリングを実施し、「急激に変容する国際社会の中で、東京が魅力と活力をそなえた都市であり続けるためには、何が必要か、その課題を」探ろうとするところにありました。
報告書の序文に「東京が本格的に近代化されたのは、戦後わずかに50年余の間ともいえます。その意味では国際社会の中で若い都市ということもできます。東京が、国際社会の中でも都民自身にとっても、より魅力と活力のある都市として成長するためには、まだまだ多くのことを学ぶ必要があると考えられます」と書かれています。
 報告書のなかに、アジアの諸都市から見た東京の魅力について肯定的理由と否定的理由とが列挙されています(次頁掲載「東京の魅力」参照)。

都市の評価に魅力が登場したわけ

 「あの人には魅力がありますね」という場合、その人物は、外から見ても内から見ても魅力があるという意味があります。
 いくら本人が「私には魅力があります」と叫んでも、他人からも同じように評価されなくては「魅力がある」とはいえません。経済力があることも魅力のひとつでしょうが、それだけでは「魅力に溢れる」とはいわないでしょう。たとえ経済力を失ってもなお魅力を持ち続けることが必要です。それが再び経済の復興につながります。
また「魅力」という言葉には、"他者と比較して"「あるか、ないか」という語感があります。
「都市の魅力」に当てはめてみると、都市の評価のひとつに「魅力」が登場したのは、国際的な都市比較が国家の盛衰にかかわるファクターとして注目され始めたからだと思います。
世界の都市について「魅力の有無」をランキングする書物がスイスで発行されています。

東 京 の 魅 力

肯 定 的 理 由

否 定 的 理 由

  • アジア地域における金融の中心地である
  • 日本やアジア地域の大企業は東京に投資している
  • 日本の商業活動の中心地
  • 日本にある多国籍企業の集積地となっている
  • ビジネスにおいてタフである
  • 発達した経済力があるが、コストが非常に高い
  • 人材の雇用力がある
  • 生活水準の高さ
  • 魅力的な生活スタイルと文化
  • 街並みが整理されており、ネオン等多くのディスプレイが近代的である
  • 言語の壁はあるが、秩序があり機能的である
  • 日本の中心
  • 礼儀正しい
  • 発展した技術がある
  • コストが高い
  • 大きな商業の中心地ではあるが、コストが高すぎ る
  • 生活水準が高い
  • 物価が高い
  • 宿泊施設が高くつく
  • 物価生活レベルが高すぎる
  • 日本企業さえも海外へ流出している
  • 経済的に発達しているが、飽和状態にある
  • 経済の空洞化がみられる
  • ビジネスは急速に比較優位を失いつつある
  • 市場が成長していないことから、ビジネスの新規 参入が難しい
  • ビジネスと文化の手法が異なる
  • 日本商品は独特であり、日本で販売するのは容易ではない
  • 生活面における状況が良くない
  • 美観が悪い
  • 今後の中心はアセアン諸国および中国になるのではないか
  • 官僚的
  • 言語の壁がある
  • 保護主義的
  • 移動が困難である
  • 土地およびレントが高い

『世界競争力年鑑 1998』に見る日本の魅力の低下

スイス・ローザンヌに本部を置くIMDという独立公益法人の刊行物に『世界競争力年鑑』(The World Competitiveness Yearbook)という報告書があります。
 毎年刊行される年鑑は世界の46ケ国について、政治、国際化、インフラストラクチュア、財政、マネジメント、国内経済、科学技術、国民などに関するデータをもとにランキング(毎年更新)をおこなうもので、発表されると、わが国のマスコミにもその一部が報道されます。
年鑑が評価するひとつに、ATTRACTIVENESS(魅力)という指数がありますが、日本に対する評価は下図のように推移しています。

tokyo03.jpg (6518 バイト)

 「1998年版」によれば世界46ケ国のうち日本は28位で(ちなみに1位はアメリカ、2位はシンガポール、46位はロシアである)、1994年の12位から年々下降をたどっています。
都市別の魅力度の数値ではないので、東京の魅力についてはあきらかではありませんが、東京の魅力ランクも下降しているのではないかと思われます。

東京魅力向上委員会による「魅力」の定義と魅力のない東京

 平成10年に東京魅力向上委員会という任意の研究会(委員長=月尾嘉男・東京大学教授)が旗揚げをしました。月尾氏は研究会で国の魅力について、つぎのような定義しています。
  「武力と財力が国力を象徴する時代は終了しつつあり、新しく出  現してきた装置が情報であり、その情報が威力となりえる本質は   『魅力』であり、魅力とはある国家、地域、都市がよそからヒト、  モノ、カネ、チエという資産を吸引する能力と理解されている。
   かつて京都が古都ゆえに原子爆弾の投下をまぬがれたように、魅  力は安全保障にもなるし、世界から人間や資産を吸引しているシン  ガポールが小国ながら重要な地位を維持しているように、魅力は国  力にも直結している」(「東京魅力向上宣言」平成10年10月)
つまり、魅力ある都市に、人、金、情報が集まり、これから東京は魅力を備えなければならない、そのために東京への集中投資が必要であるという論旨です。
委員会の最近の成果のひとつである「東京魅力向上宣言」は"東京の問題点−−魅力のない都市生活"としてつぎの諸点をあげています。
 @ 生活時間、体力、エネルギー、環境を浪費する長距離通勤
 A 狭くて、地震に弱い住宅
 B 安全性、快適性を損なっている道路、オープンスペースの貧弱さ
 C 問題がいつまで経っても改善されず、計画も実現しない社会システム
 (このほか、外国人、外国企業の東京生活に対する不満、東京の魅力に対する国際評価の低下があげられ、後者については、@世界競争力調査における競争力順位の低下、A国際会議開催数の減少、B国際観光客の伸び悩み、C外国企業上場数の減少、D留学生の伸び悩みがあげられています)。

 以上に加えて、外国から見て東京の魅力のなさについて、@国際空港から遠い A通信・移動コストが高い B英語を話せる人が少ない C国際会議が少ない−−をあげる識者もいます(竹中平蔵・慶応義塾大学教授)。

 いまこそ、東京が自他ともに認める「魅力」を永く維持するために知恵を寄せ合い、子孫に残す都市づくりをしなければならないと思います。
魅力ある東京の将来のために。


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