東京都は2014年12月末、「史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現」と、「課題を解決し、将来にわたる東京の持続的発展の実現」を目標に据えた、「東京都長期ビジョン」を公表した。2015年度から17年度までの当初3年間で3兆7400億円の予算を投じ、社会構造の変化や想定される自然災害への対策などを強力に推進していく方針を示した。
2020年東京五輪大会成功に向けたさまざまな取り組みと、大会後の有形無形のレガシー(遺産)を明らかにするほか、人口減少と高齢化、首都直下地震や気候変動によるゲリラ豪雨といった災害の脅威など、直面する課題に対して、数値目標を設定して政策展開を明記することで、解決への道筋を示した。今後10年間の具体的な政策工程表の側面も持っている。
東京の将来像実現として8つの都市戦略を提示。都市戦略を実現するために25の政策指針もまとめた。すでに予算の裏付けがある3カ年の実施計画も盛り込んだ(表参照)。
15年度からの3年間の総事業費は3兆7400億円で、豪雨対策や災害対応を盛り込んだ都市戦略「安全・安心な都市の実現」に1兆2900億円、スマートエネルギー都市の創造や都市インフラの安全性確保を目的にした都市戦略「豊かな環境や充実したインフラを次世代に引き継ぐ都市の実現」に1兆1700億円、広域的な物流ネットワークの形成などの「高度に発達した利用者本位の都市インフラを備えた都市の実現」に7800億円を投じるなど、ハード整備に重点を置いた計画となっている。また、「多摩・島しょの振興」にも3カ年で7700億円を投入する。
このうち「安全・安心な都市の実現」では、「災害への備えにより被害を最小化する高度な防災都市の実現」を政策指針に掲げ、水害対策や特定整備路線整備に今後も注力する方針を示した。水害対策では25年度までに調節池など13施設を完成させ、都内全域の総貯水量を13年度比で約1.7倍まで引き上げる。
特に、白子川地下調節池と神田川・環状七号線地下調節池を連結する環状七号線地下広域調節池(仮称)を整備することで、1時間当たり100㎜の局地的・短時間の集中豪雨にも効果を発揮させる。
東京都は公表した長期ビジョン実現へ、1月に公表した15年度予算原案でも、1兆円を突破する前年度比9.6%増1兆0073億円の投資的経費、前年度比約1.8倍の325件に上る新規事業など積極的予算編成に踏み切っている。
東京都長期ビジョンの事業費
都市戦略 | 15年度事業費 | 3か年事業費 (15-17年度) |
---|---|---|
政策指 | ||
成熟都市・東京の強みを生かした大会の成功 | 870 | 3000 |
2020年大会の成功に向けた万全な開催準備とレガシーの継承 | 620 | 1900 |
美しく風格があり、誰もが安心して過ごせるバリアフリー環境の構築 | 80 | 350 |
多言語対応の推進により、すべての外国人が快適かつ安心して滞在できる都市の実現 | 50 | 230 |
世界に存在感を示すトップアスリートの育成とスポーツ都市東京の実現 | 120 | 500 |
高度に発達した利用者本位の都市インフラを備えた都市の実現 | 2300 | 7800 |
陸・海・空の広域的な交通・物流ネットワークの形成 | 2200 | 7300 |
誰もが円滑かつ快適に利用できる総合的な交通体系の構築 | 120 | 530 |
日本人のこころと東京の魅力の発信 | 200 | 890 |
「おもてなしの心」で世界中から訪れる人々を歓迎する都市の実現 | 140 | 700 |
芸術文化都市を創造し、日本文化の魅力を世界に発信 | 60 | 190 |
安全・安心な都市の実現 | 3900 | 12900 |
災害への備えにより被害を最小化する高度な防災都市の実現 | 3900 | 12800 |
日常に潜む危険や犯罪から都民生活を守る、安全・安心の確保 | 10 | 60 |
安心して産み育てられ、子供たちが健やかに成長できるまちの実現 | 440 | 1400 |
高齢者が地域で安心して暮らせる社会の実現 | 340 | 1000 |
質の高い医療が受けられ、生涯にわたり健康に暮らせる環境の実現 | 100 | 230 |
障害者が地域で安心して暮らせる社会の構築 | 90 | 300 |
世界をリードするグローバル都市の実現 | 3000 | 4100 |
日本の成長を支える国際経済都市の創造 | 360 | 620 |
都心等の機能強化による東京の都市力の更なる向上 | 2200 | 2600 |
若者や女性、高齢者など全ての人が活躍できる社会の実現 | 230 | 510 |
東京、そして日本を支える人材の育成 | 90 | 270 |
2020年大会の成功と東京の発展に寄与する都市外交の推進 | 100 | 140 |
豊かな環境や充実したインフラを次世代に引き継ぐ都市の実現 | 3200 | 11700 |
スマートエネルギー都市の創造 | 310 | 890 |
水や緑に囲まれ、環境と調和した都市の実現 | 660 | 2300 |
都市インフラの安全性を高め、安心できる社会の確立 | 2200 | 8400 |
少子高齢・人口減少社会におけるこれからの都市構造 | 20 | 70 |
多摩・島しょの振興 | 1600 | 7700 |
多摩・島しょ地域の発展・成熟したまちづくりに向けた環境整備の推進 | 1300 | 6900 |
多摩・島しょの豊かな自然を生かした地域の活性化 | 260 | 770 |
総計 | 13000 | 37400 |
※ 事業費は、一般会計、公営企業会計などを含む全会計分で、計数等未整理につき変動することがある。1000億円を超える規模の場合10億円単位を四捨五入、1000億円未満の場合1億円単位を四捨五入して計上している。都市戦略及び政策指針は再掲事業を含めた金額、総計は本掲事業のみを積み上げた金額。