政府は、中小企業・小規模事業者のスムーズな経営者の世代交代、いわゆる「事業承継」を加速させるために、今後10年間限定の集中的支援を行う。これまで納税猶予制度では先代経営者からの贈与・相続に伴う税支払い猶予が53%にとどまっていたが、100%猶予する。これによって事業承継時の相続税など現金の税支払い負担はゼロになる。また、従来の猶予制度適用をためらわせていた、厳格な雇用確保要件も大幅に緩和する。他企業や親族以外の経営者などに事業を譲渡するM&Aについても、登録免許税・不動産取得税軽減など支援策を新設する。中小建設企業の経営者にとって大きな課題だった「事業承継」が、政府の集中的で抜本的な支援によって問題解決へ前進することになる。
2025年度までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者約245万人のうち、127万人は後継者が定まっておらず、政府は中小企業の事業承継を問題視している。このため安倍政権は、今夏までに策定する2018年度成長戦略の前提として2017年12月に閣議決定した、「新しい経済政策パッケージ」で、事業承継の集中支援を行う。「現状を放置し、中小企業の廃業が急増すると、10年間の累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDP(国内総生産)が失われるおそれがある」ことへの危機感が背景にある。
政府が決定した2018年度税制改正のうち中小企業・小規模事業者向け支援は、①中小企業の事業承継支援の抜本強化、②親族外への事業承継(M&A)の支援策の創設、③設備投資に係る固定資産税の特例、④賃上げを頑張る企業の徹底的支援、⑤IT機器などの少額減価償却資産導入支援、⑥交際費の損金算入特例適用の2年延長――の6項目。今回は①の事業承継支援の抜本強化と②のM&Aについて解説する。
①事業承継支援の抜本強化では事業承継税制改正によって、▷対象株式数上限等の撤廃(拡充)▷雇用要件の抜本的見直し(拡充)▷対象者の拡充(拡充)▷経営環境変化に応じた減免(創設)▷相続時精算課税制度の適用範囲拡大(創設)――が導入される。 ②M&A支援については、「中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置の創設」として、中小企業等経営強化法改正によって、認定を受けた計画に基づいて再編・統合をした場合、登録免許税・不動産取得税を軽減することで、第三者への事業承継も後押しする。 |