「仕事とは誰かに喜んでもらうこと」
今日から研修会ということで緊張されているかと思います。そんなに難しいことは話さないので、肩の力を抜いて、リラックスして聞いてください。
まずは、みなさん就職おめでとうございます。私も30数年この業界で生きてきましたが、今でも毎年新入社員を迎えるたびに、心が新たになる気持ちがします。今日は話す機会を与えていただいたので、仕事について私が考えていることを率直に述べたいと思います。
人間には、人から愛されたい、褒められたい、必要とされたい、人の役に立ちたいという四つの欲求があると言われています。愛されたいは仕事の範疇に入りませんが、褒められたい、必要とされたい、役に立ちたいという欲求は、仕事を通じて叶えることができるのです。誰かに喜んでもらうことは非常にありがたいことです。喜んでもらおうと思いながら仕事に取り組んでください。
後工程をお客様と思おう
仕事とは何か。仕事とは、「誰かに喜んでもらって収益を得る」ことだと思っています。「後工程はお客様」という言葉をよく覚えておいてください。収益ももちろん大事です。しかし、仕事はお金だけではないのです。
「後工程はお客様」とは、何かの仕事を100%仕上げて、次に渡された人が困らないよう、相手をお客様だと思って渡すことです。建設業は、企業や役所などの大きな団体が顧客です。「B to B」の代表的産業です。後工程を心がけて仕事をすれば、完成させて建物・道路を引き渡す時に非常に喜んでもらえる、ということをよく覚えておいてください。
それを実現するために、次の二つを早く身に着けてほしいと思います。一つは仕事をするために必要なスキル。会社で決められた書類、顧客から要求された書類をきちんと作る能力を身に着けることです。これについては皆さんが今後、それぞれの会社で学んでいかれることでしょうから、今日は二つ目の、社会に必要なジェネラルルールを説明しましょう。
「挨拶をしろ」、「真面目に仕事を続けろ」、「必ず誰かが見ていると思え」。これらを身に着けていないと、社会人として生きていくことが少なからず難しくなるでしょう。この三つのルールは国内外問わずにどこへ行っても、きちんとできなければなりません。真面目に仕事を続けることは、当たり前だと思うでしょう。しかし、慣れてくると当たり前ではなくなるものなのです。誰も見ていないから手を抜こう、ではなく、手を抜かずに後工程に渡すことを心がけてください。いつか、一所懸命やっているのに認めてもらえないという時期が訪れるでしょう。その時も、三つのルールを忘れずにいてください。このジェネラルルールとスキルとを身に着けた時、皆さんにとって鬼に金棒となるでしょう。
進む「改革」ともに考えて
働き方改革についても、非常に旬な話題なので話しておきましょう。働き方改革は大事な問題を我々に突き付けています。今日まで日本人が営々と築き上げてきた仕事のやり方や、日本の社会の価値観に対して問題提起がされているのです。改革が達成できなければ日本が世界から取り残されてしまう、そのくらい大事な課題だと考えています。
AI(人工知能)を始めとする最新技術の導入や、書類・会議の簡素化、在宅勤務、テレワークなど様々な働き方を積極的に認める風土の醸成、それから生産性向上のさらなる取り組みによって改革を進める必要があるのです。働き方改革は非常に難しい問題ですが、挑戦していかなければならないのです。
4月からは改正労働基準法の施行により、残業規制が厳しくなりました。建設業は5年後に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されますが、5年後とはいえ、その日は、あっという間に訪れます。どう対応していくかを考えなければなりません。建設業では前例がないことなので悩まされるところです。皆さんも会社に帰って私たちと一緒に考えてほしいと思います。
最後に、健康について話しましょう。心と体、二つの健康がありますが、たとえあなたがスランプに陥ることがあっても、心の健康を維持していれば大丈夫です。仕事や家庭で何らかの責任を背負っていれば、悩みやストレスは避けて通れないものです。程度の差こそあれ、ものごとは先送りせずに対処しなければ、深刻な状況になる可能性もある。そうなる前に、逃げずに向き合ってほしいと思います。
私は、仕事を離れたところに自分の隠れ家のような趣味を持つことが大事だと考えています。ちょっと疲れたら、リフレッシュしてまた戻ってこられる場を持ち、大事にしてほしい。仕事とは別に趣味を持てば、人と会話する時にも役に立つはずです。
仕事は誰かに喜んでもらって報酬を得ること、そして三つのジェネラルルール、これを忘れないでほしい。
社会人、建設人として頑張って活躍をしてください。