出典:国立研究開発法人国立環境研究所HP |
気候変動による異常気象、海面上昇、食料供給、生態系破壊などの重大な影響を低減するために、地球の平均気温上昇を1.5℃未満に抑えることの重要性の国際的認識が深まっている。その代表例の一つが、2015年12月に採択された2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み、いわゆる「パリ協定」だ。日本は2019年6月、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定、国連に提出した。長期戦略の最終到達点として「脱炭素社会」を掲げ、環境と成長の好循環の実現を目指す。
こうした流れのなか、国立研究開発法人国立環境研究所と(公財)地球環境戦略研究機関らの研究者チームは2021年7月、国内52都市における脱炭素型ライフスタイルの効果を初めて定量化したことを発表した。具体的には、「移動」「住居」「食」「レジャー」「消費財」に関する65の脱炭素型ライフスタイルの選択肢を特定し、その温室効果ガス(CO2)削減効果を都市別に定量化。さらに分析対象65項目をまとめた57の選択肢を公開した。57の温暖化対策を見える化し、それぞれの取り組みでCO2をどのくらい減らせる効果があるのか、具体的な数値も個別に示されているのが特徴だ。
地球温暖化を1.5℃未満に抑える目標を達成するためには、世界全体で2030年には一人1年あたりの家計消費のカーボンフットプリント(ライフスタイルに関連する温室効果ガス排出量)を3.2tに抑えることが必要。東京都区部の場合、2030年目標を3tとすると、目標達成には一人あたり4.2t削減しなければならない。
カーボンフットプリントとは
通常「カーボンフットプリント」とは、直接・間接的な温室効果ガス排出量を指しますが、今回公表されたのは脱炭素型ライフスタイルの効果を定量化したもので、ライフスタイルに関連した排出量です。市民生活を支える様々な製品やサービスの利用を通じて排出されるCO2などの温室効果ガスを指します。この考え方では、直接的に家庭で利用する都市ガスやガソリンの燃焼だけでなく、家計が消費するあらゆる製品やサービスの資源採掘、素材生産、製品組み立て、輸送、使用、廃棄までのライフスタイル(ゆりかごから墓場まで)において排出される温室効果ガスを把握することができます。 日本のカーボンフットプリントは、政府機関の活動やインフラ投資を除く全体の約6割が家計消費に由来し、ライフスタイルを支えるために生じています。カーボンフットプリントは「スコープ3」指標として取り入れられています。 |
スコープとは
スコープ1とは、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼や工業プロセス)を指します。 スコープ2とは、他社から供給された電気、熱、上記の使用に伴う間接排出です。 スコープ3は、1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社排出)を指します。 温室効果ガスは、自らが排出するものだけでなく、活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量の削減が求められています。 |
脱炭素型ライフスタイル選択肢 |
出典:国立研究開発法人国立環境研究所HP |