「地域に貢献し感謝される建設業」
新社会人のみなさん、入社おめでとうございます。今日の日を期待と不安を持って迎えられたことと思います。本来であれば直接会ってお話ししたいところでしたが、コロナ禍での開催であり、オンラインでのご挨拶とさせていただきます。本日は建設業の魅力についてお話しさせていただきながら、みなさんが今、胸に秘めている期待感がさらに高まればと思っています。
さて、みなさんはどんな動機で建設業を志したのでしょうか。私が建設業を目指すきっかけとなったのは、1970年に開催された大阪万博(万国博覧会)です。もともと将来の仕事として、通信工学に携わりたいと思っていましたが、会場内で目にした様々なパビリオンの存在感・未来感に圧倒された私は、建設の魅力に取りつかれてしまいました。そこには私の人生観を大きく変えるインパクトがありました。
私たちが働く東京は、ここ100年、関東大震災や敗戦による荒廃から、加速度的に都市整備が進み、最近では、世界48都市を「経済」、「研究・開発」、「文化・交流」、「居住」、「環境」、「交通・アクセス」の6分野で評価する世界都市総合力ランキングで、3位になるまでに成長しました。さらに現在、上位を目指し都市の魅力づくりを進めているところです。私たちの仕事が、この東京を世界に誇れる都市にしていくことに貢献していることは大きな魅力だと思います。
また、建設業もグローバル化が進んでおり、作業所で働く人の国際化が当たり前になっています。様々な言語を交えたコミュニケーションが必要とされるようになっており、様々な国の文化に触れながら一緒に仕事をしていくのも魅力の一つです。
建設は街をより良くするためのプロジェクトである一方、破壊と創造を伴います。そこでは地域住民の理解と協力が不可欠です。作業所は工事に携わる人も多く、かなりの人的・物的パワーを持っていますので、その一部を地域社会に還元することで、地域の人々との間に信頼感が醸成され、協力関係が生まれ、最後には地域住民から「このプロジェクトができて良かった」と思ってもらう経験へと繋がっていきます。
社会や地域のためになる構造物を造る建設行為の社会的役割は大きなものがあり、なくてはならない産業です。これからも一層社会への貢献活動を行い、周りの人々に認められることの魅力を感じながら、建設業の社会的地位の向上に一緒に取り組んでいきましょう。
社会的貢献の一つとして欠くことのできないのが、災害復旧・復興への参加です。自然災害発生の際、最も早く活動を始めるのが我々建設業です。国や地方自治体と連携を取り、迅速な復旧・復興に向けて貢献していきます。これを事業としてできることが建設業の特徴でもあります。と同時に、災害が起こらないよう、様々な構築物・施設の建設に取り組んでいます。一般の人々はなかなか注意してみることがないかもしれませんが、堤防や調節池による水害対策など、様々なプロジェクトが進められています。地球温暖化の影響で近年は災害の激甚化が進んでおり、「何年に一度」と語られる災害が頻発するようになっています。私たちが担うインフラ整備は、地域の人々の暮らしも守っているのです。
デジタル化で建設業の未来をつくる
建設分野でもデジタル化が進んでいます。ICT活用やデジタル化を進め、安全で品質が良く、スピーディーで楽しく、わくわくする仕事へと改革する取り組みが進んでいます。こうした建設業の魅力向上の役割を担うものとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組んでいます。ツールやデータを駆使し、既存概念にとらわれることのない新しい働き方を生み出していく。デジタルネイティブなみなさんに活躍してもらいたい世界が、目の前に広がっています。
建設は一人でできるものではありません。様々な人々と協力し、教え合い、分担しあって完成させていくものです。幅広い世代間で、成し遂げるという一つの目標を共有し、やりがいや誇りを持ちながら仕事をするのが建設業です。一方で、若い仲間と未来をつくることもできます。仕事を通じて連帯が生まれてきます。技術の向上や資格取得などを含めた各々の成長を若い仲間で競い、励ましあい、情熱を爆発させればさせるほど良い作品が生まれます。東京建設業協会でも各種研修の機会を提供しています。そうした機会を通じて同世代の仲間を増やしていただければと思います。
本日は建設業の魅力についてお話ししてきましたが、その魅力を感じていただくことは出来たでしょうか。私が作業所で働いていた時代と違って、これからみなさんが働く社会は、脱炭素をはじめとする環境への取り組みも必須課題となります。環境問題にも貢献する建設業を目指しながら、共に建設業の未来をつくっていきましょう。