6月15日に開いた建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会で国土交通省は、建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル別年収試算を公表した。週休2日確保を前提に、公共工事設計労務単価が賃金として技能者に行き渡った場合の年収を試算した。
国交省が試算公表したのは、2022年度公共事業労務費調査で把握した日当ベースの賃金実態をもとに、国交相が認定しているレベル判定の能力評価基準40分野のうち、労務費調査の対象51職種に対応する32分野。週休2日を確保した前提で年間234日働いたとして年収ベースを試算した。
国交省は、試算した金額に「法的拘束力はなく、支払いを義務づけるものではない」と説明。そのうえで、「これをどう使うか。処遇面のキャリアパスとして示したもので、目指すべきイメージとして受発注者が共有して推進したい」と強調した。
CCUSに登録していても能力評価を受けず「レベル1」となっている技能者も多いとみられている。そのため今回の試算に当たって、レベル評価されていない標本は、経験年数と資格からレベルを推定(レベル1相当は経験5年未満、レベル2相当は5年以上10年未満、レベル3相当は10年以上または1級技能士、レベル4相当は登録基幹技能者)して算出。そのうえで、4つのレベルごとに、▷上位(上位15%程度の賃金水準)、▷中位(中位程度の賃金水準)、▷下位(下位15%程度の賃金水準)――の3階層に分けて公表した。
CCUSレベル別年収の明示は、国交省有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」提言『賃金行き渡り・働き方改革への対応』の一つとして挙げられていた。
出典:建設業振興基金データより国土交通省 |
また、国土交通省は建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会で、CCUSの就業履歴蓄積と能力評価の加速化へ向けた施策パッケージも提示した。具体的には、能力評価制度で経過措置として設けられている『経歴証明』については、書類提出期限を5年延長して2029年3月31日とした。また、過去の経歴を証明できる期間の範囲を「2024年3月31日まで」と新たに定めたことを説明。経歴証明とは、CCUSに就業履歴を蓄積できる環境が整うまでの経過措置。CCUSに事業者登録している所属事業者等(元請け事業者、上位の下請け事業者含む)が、経歴証明書の欄に入力した能力評価申請書を能力評価実施団体に提出することで、登録技能者がCCUS利用を始める前の就業日数と職長・班長としての就業日数を証明する仕組み。
さらに、技能者登録と能力評価申請の同時申請を可能にする「ワンストップ申請」を24年4月をめどに始めるなど、建設業振興基金が運営するCCUSと能力評価の連携を強化。カードリーダーが設置されていない現場で就業履歴を蓄積できる環境も整備する。