2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害などを踏まえ、危険な盛り土などを全国一律の基準で包括的に規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称・盛土規制法)が、23年5月26日から施行された。都道府県知事などが盛り土などによる災害が懸念されるエリアを規制区域に指定し、区域内での盛り土工事などは許可制となることが大きな柱だ。
東京都は24年度中に盛土規制法に基づく新たな規制区域を指定する方向で検討を進めている。経過措置として、盛土規制法に基づく新たな規制区域を指定するまでは、改正前の宅地造成等規制法による規制が適用される。
盛土規制法の主なポイントは、▷スキマのない規制▷盛土等の安全性の確保▷責任の所在の明確化▷実効性のある罰則の措置――の4つ。
危険な盛り土などをスキマなく規制するため、都道府県、政令市、中核市の長は、地震や降雨で盛り土の崩壊や土石流化などの恐れのあるエリアを規制区域に指定する。
規制区域は、市街地やその近隣などを対象とする「宅地造成等工事規制区域」と、渓流の上流域などを対象とする「特定盛土等規制区域」の二つ。規制区域内では一定規模以上の盛り土や切り土、ストックヤードへの仮置きといった一時的な土石堆積も許可が必要となる。
出典:盛土規制法パンフレット(事業者用)国土交通省・農林水産省・林野庁 |
安全性の確保では、擁壁や排水施設の設置、地盤の締め固めなど盛土等を行うエリアの地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準を国が設定する。許可基準に沿って安全対策が行われているかどうかを確認するため、施工状況の定期報告、施工中の中間検査、工事完了時の完了検査も実施する。
盛土などが行われた土地について、土地所有者、管理者、占有者が安全な状態に維持する責務を有することも明確化した。災害防止のため必要なときは、土地所有者などだけでなく、原因行為者に対しても、是正措置などを命令できる。
違反行為に対する抑止力として十分に機能するよう罰則も強化した。無許可での行為実施や命令違反などに対する罰則は懲役3年以下、罰金1000万円以下としたほか、法人については罰金3億円以下と定めている。