出来るだけ多くの人が利用できるように
バリアフリーの概念を包んで
ユニバーサルデザインとは、障害の有無や年齢、性別、国籍などにかかわらず、初めから出来るだけ多くの人が利用できるように、利用者や人間本位の考え方に立って、都市や生活環境をデザインする考え方です。当然、建築物だけでなく道路、鉄道などさまざまなインフラ整備でも、段差を無くしたり、エレベーターやエスカレーターを設置、多言語表記の表示など、ユニバーサルデザインの考え方が導入されています。
もともとユニバーサルデザインは、1970年代後半から、米国人建築家・工業デザイナーのロナルド・メイスが提唱したことが始まりと言われています。
メイスはユニバーサルデザインを説明するため7つの原則を挙げています。具体的には
(2) 利用者に応じた使い方ができること(柔軟性の原則)
(3) 使い方が簡単ですぐわかること(単純性と直感性の原則)
(4) 使い方を間違えても、重大な結果にならないこと(安全性の原則)
(5) 必要な情報がすぐ理解できること(認知性の原則)
(6) 無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に使えること(効率性の原則)
(7) 利用者に応じたアクセスのしやすさと十分な空間が確保されていること(快適性の原則)
――が7つの原則です。
これまで、誰にでも使いやすい空間づくりとして、ユニバーサルデザインの考え方を導入したさまざまな整備がされていますが、もう一つの考え方である、「バリアフリー」とは、何が違うのでしょうか。
バリアフリーとは、「障害のある人が社会生活をする上で障壁となるものを除去する」と定義されています。この場合の障壁とは、段差といった物理的 障壁だけでなく、社会的、制度的、心理的といった全ての障壁を意味しています。そのため、建築分野で使われるユニバーサルデザインは、バリアフリーとほぼ同じ意味で捉えがちです。
またバリアフリーと、ユニバーサルデザインは、「すべての人の平等な社会参加の実現」というゴールは一緒ですが、現在、行政が考えるユニバーサル デザインとは、バリアフリーを包含し、発展させた考え方と言えます。言い換えると、バリアフリーとはユニバーサルデザインを実現するための一つの手法とも言えます。
すべての人に開かれた五輪都市をめざす
2020年見据え、さらなる充実図る
ユニバーサルデザインの考え方に基づいて、東京都が進めているのが「東京都福祉のまちづくり推進計画」です。この4月1日(2014年度)から5年間の計画でスタートする同計画は、2009年度から2013年度までの「東京都福祉のまちづくり推進計画(112事業)」を引き継ぎ、発展・改定した計画の位置づけとなります。
これまでにも東京都は、1995年に東京都福祉のまちづくり条例を制定、1998年には福祉のまちづくりに全庁横断的に取り組むため、最初の「東京都福祉のまちづくり推進計画」を策定し、施設のバリアフリー化やエレベーター、エスカレーター設置、ノンステップバス導入などに取り組んできました。
東京都「福祉のまちづくりをすすめるためのユニバーサルデザインガイドライン」より作成 |
今年度からスタートする「福祉のまちづくり推進計画」では、従来からの基軸であるユニバーサルデザインを基本とした福祉のまちづくり推進に加え、 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、ユニバーサルデザイン先進都市・東京を実現するため、施策の一層の充実を、計画の目指すべき方向に追加しています。
(1)円滑な移動、施設利用のためのバリアフリー化推進、(2)地域での自立した生活の基盤となるバリアフリー住宅の整備、(3)さまざまな障害特性や外国人 などにも配慮した情報バリアフリーの充実、(4)災害時・緊急時の備えなど安全・安心なまちづくり、(5)心のバリアフリーに向けた普及啓発の強化と社会参加への支援――の5項目を基本的視点に、さまざまな事業に今後取り組む予定です。
具体的事業では「円滑な移動、施設利用のためのバリアフリー化推進」として、日常生活に密接に関係する公共交通や建築物、道路・公園などのバリアフリー化をさらに進める。また店舗や飲食店といった利用頻度の高い個別施設のバリアフリー化だけでなく、施設と最寄り駅を結ぶ移動経路など、地域全体を視野に置いた、面的バリアフリー化も見据えています。
「国土交通省・東京都ホームページ」より作成 |
また、「バリアフリー住宅整備」としては、既存都営住宅の高齢者や障害者に配慮したバリアフリー化をさらに推進するほか、都営住宅建て替えによっ て創出した用地の有効利用として、区市町村と連携し高齢者施設など地域に必要な福祉施設の整備も促進するほか、区市町村の公営住宅の新規供給や建て替えに対しても、バリアフリー化を要件とした補助をすることで、高齢入居者に配慮した公営住宅整備促進を進める予定です。
こうしたさまざまな都市インフラで、バリアフリーが進みます。さらに、観光施設や文化財も多い東京を訪れる国内外の旅行者や、視覚や聴覚に障害を持った人たちが、交流し歴史や文化に触れ、楽しめるようにするため、点字や音声、聴覚障害者向けの文字化や多言語表記、IT技術を使った「情報バリアフリー化」もソフト・ハード両面で整備が進みそうです。
こうして見ると、ユニバーサルデザインをキーワードに、住む人だけでなく訪れる人たちにも、良いまちと感じてもらえる整備が、2020年までに一層進むことは確かです。建設業にとっても、ユニバーサルデザインに基づいた施設整備への貢献が、今後ますます増えていくと言えるでしょう。