コンテナ化対応で50年
――東京港の役割、特徴は
開港は昭和16年(1941)です。開港して約半年後には太平洋戦争が始まったため、東京港本来の港湾機能はほとんど停止状態となってしまいましたが、戦後、国内産業の復興を支える港として重要な役割を果たしました。さらに、昭和40年代に入ると世界的なコンテナ輸送革命の波が沸き起こり、「貨物のコンテナ化」が進むこととなりますが、東京港はいち早くコンテナ化に対応し、昭和42年(1967)、我が国初めてのコンテナふ頭である品川コンテナふ頭をオープンさせました。
翌昭和43年(1968)には、日本船社初のフルコンテナ船が東京港とカリフォルニアを結ぶ航路に就航しており、今年はそれからちょうど50年という節目の年でもあります。その意味で東京港にとって、今年はエポックな年でもあります。
東京港は開港から今年で77年ですが、そのうちの50年は港湾にとっての新たな対応、言い換えれば大波と言える「コンテナ化」とともに歩んできました。これは大きな特徴です。現在、東京港が扱う外国貿易(外貿)による輸出入量の97%がコンテナ貨物です。
出典:貿易統計 |
また東京港は平成10年(1998)以降、外貿コンテナ貨物取扱量日本一を維持し続けています。首都圏という大消費地を抱えていることが最大の理由です。東京港は1300万東京都民の生活はもちろん、群馬、栃木など北関東も含む首都圏4000万人の生活と産業を支えていると言えます。
高度成長期以降、製造拠点が海外に移転するなど、変わり続ける日本の産業構造に連動する形で、全体に占める輸入量の比率が年々高まってきているのも東京港の特徴です。現在、輸入と輸出は割合にして7対3となっています。大都市の消費は海外からの輸入にも頼っているところが大きいため、それだけ東京港の利用が進んでいると言えるでしょう。こうしたことが、外貿コンテナ貨物取扱量20年連続日本一の背景にあります。
東京港の歴史
◇ | 明治13年(1880) 松田東京府知事が東京港築港論を提案 |
◇ | 明治13年(1880) 第1期隅田川口改良工事開始(500t級船舶を対象に航路、泊地を浚渫) |
◇ | 大正12年(1923) 関東大震災。陸上交通網の崩壊で東京港の重要性が認識される |
◇ | 大正14年(1925) 日の出ふ頭完成。最初の近代的ふ頭として翌年3月供用開始 |
◇ | 昭和9年(1932) 芝浦ふ頭完成 |
◇ | 昭和9年(1934) 竹芝ふ頭完成 |
◇ | 昭和16年(1941) 開港(5月20日) |
◇ | 昭和20年(1945) 終戦。臨港地域のほとんどを連合軍が接収 |
◇ | 昭和25年(1950) 豊洲石炭ふ頭の一部完成し操業開始。港湾法が公布・施行 |
◇ | 昭和26年(1951) 特定重要港湾に指定。港湾法に基づき東京都が東京港の管理者に |
◇ | 昭和30年(1955) 晴海ふ頭1バース供用開始 |
◇ | 昭和42年(1967) 品川重量物ふ頭完成。フルコンテナ第1船ハワイアン・プランター号入港。北米西岸コンテナ定期航路開設 |
◇ | 昭和46年(1971) 欧州定期コンテナ航路開設(大井ふ頭) |
◇ | 昭和49年(1974) 13号地外貿定期船ふ頭完成。フェリーふ頭3バース完成、本格的フェリー輸送の開始 |
◇ | 昭和50年(1975) 大井コンテナふ頭8バース完成 |
◇ | 昭和52年(1977) 東京港における埋立地の開発に関する要綱施行 |
◇ | 昭和60年(1985) 青海コンテナふ頭第1バース供用開始 |
◇ | 平成3年(1991) 東京港開港50周年記念式典・イベント。晴海客船ターミナル供用開始 |
◇ | 平成5年(1993) レインボーブリッジ開通。青海コンテナふ頭第2バース供用開始 |
◇ | 平成6年(1994) 青海コンテナふ頭第3バース供用開始 |
◇ | 平成7年(1995) 東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」開業。竹芝客船ターミナル全ゾーン完成 |
◇ | 平成8年(1996) 青海コンテナふ頭第4バース供用開始。東京臨海高速鉄道臨海副都心線の開業 |
◇ | 平成10年(1998) 大井コンテナふ頭新第7バース供用開始 |
◇ | 平成11年(1999) 大井コンテナふ頭新第3バース供用開始 |
◇ | 平成12年(2000) 大井コンテナふ頭新第6バース供用開始。外貿コンテナ取扱量、全国で3年連続1位 |
◇ | 平成13年(2001) 「東京港開港60周年」記念ロゴマーク制定、記念事業 |
◇ | 平成14年(2002) 東京港臨海道路の臨海トンネル開通 |
◇ | 平成15年(2003) 大井コンテナふ頭新第5バース供用開始 |
◇ | 平成16年(2004) 大井コンテナふ頭新第1バース供用開始 |
◇ | 平成18年(2006) 「ゆりかもめ」豊洲駅まで延伸 |
◇ | 平成20年(2008) 東京都、川崎市及び横浜市が広域連携強化のための基本合意締結 |
◇ | 平成22年(2010) 京浜港(東京港・川崎港・横浜港)が「国際コンテナ戦略港湾」に選定 |
◇ | 平成23年(2011) 「東京港開港70周年」事業。外貿コンテナ取扱量、13年連続全国1位 |
◇ | 平成24年(2012) 東京港臨海道路・東京ゲートブリッジ開通 |
出典:東京都港湾局 |
――コンテナふ頭整備の特徴は
品川コンテナふ頭を供用開始した後、本格的なコンテナ化に対応するために整備されたのが「大井コンテナふ頭」です。大井コンテナふ頭は、いかに早期に本格的なコンテナふ頭の整備を完成させるかという使命のもと、昭和44年(1969)に工事着手し、昭和50年(1975)までにコンテナふ頭8バースすべてを完成し供用を開始しました。
その後、「青海コンテナふ頭」を整備し、コンテナふ頭は「大井」、「青海」、「品川」の3ふ頭態勢となりました。この間、コンテナ貨物量が増加の一途をたどるだけでなく、船舶の大型化が進み、さらなる機能強化が東京港で不可欠となりました。
しかし、新規のコンテナふ頭を整備するには、ふ頭用地が未整備であるとともに、コンテナふ頭に関連する道路等の整備に時間を要すため、他に前例のない、ターミナルを運営しながら、既存ストックを活用した大井コンテナふ頭の再整備を行うこととしました。この大井コンテナふ頭の再整備は、工事期間中のシフトバースをいかに確保するかということが大きな課題でしたが、新規に整備した青海コンテナふ頭へ大井コンテナふ頭の利用者が移転した結果できた空バース等を活用し、既存借受者のターミナル運営への影響を最小限に抑えて実施しました。整備期間は平成8年(1996)から平成15年(2003)で、岸壁延長2354m、水深15m、東京港で屈指の高規格ターミナルが完成しました。
玉突き整備で機能さらに強化
――再整備による機能向上とは
大井コンテナふ頭の再整備は、両端及び背後の拡張が困難であったため、大水深の桟橋を全面に整備するとともに8バースを7バースとしました。その結果、岸壁の大水深化、1バース当たりの岸壁延長及びターミナル面積の拡張を実現しました。また、ガントリークレーンの大型化、リーファーコンテナ(冷凍・冷蔵貨物用コンテナ)置場の増設、ゲート機能の強化などによりターミナル機能の向上を図りました。
――今後の東京港の整備について
現在の東京港は、施設能力を大幅に上回る外貿コンテナ貨物を取り扱っており、交通混雑が深刻となっています。また、世界的なコンテナ船の大型化に対して、十分対応しきれていません。このため、中央防波堤外側に「Y1」、「Y2」、「Y3」という3つの新規コンテナふ頭の整備を進め、Y1は昨年11月に供用を開始、Y2は2019年度中に供用を開始する予定です。Y3は、2024年度の工事完成予定で、その後に供用を開始する予定です。この新規コンテナふ頭へ、既存利用者に移転してもらうことで、既存コンテナふ頭の再編・機能強化を進めていく予定です。
昨年1年間に東京港で取り扱われた外貿コンテナ貨物取扱量は450万TEUで、今後とも貨物量は増加していく見込みです。深刻化する東京港の交通混雑等を解消するため、東京港の宿命でもある限られた水域や陸域を最大限に活用し、これまでの英知を結集して、さらなる機能強化を図っていきます。
東京港と歴史 見るならココ TOKYOミナトリエ
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東京港の前身である江戸湊や、東京港開港、日本の高度成長とともに発展を続けた東京港の姿など、過去から未来までを分かりやすく展示しているのが、「TOKYOミナトリエ」(東京臨海部広報展示室、江東区青海の青海フロンティアビル20階)だ。地上100mに展示室があり、眼下に東京港と開発が進む臨海副都心が広がる。 江戸の河岸の様子を再現したジオラマ、模型のほか、港と江戸・東京400年の歩みをグラフィック写真年表で振り返る「ヒストリーギャラリー」など多彩なコーナー展示を行っている。 明治、大正、昭和初期と東京港開港以前から進む隅田川口などの浚渫は、近代港の条件に合う水深・水路を確保し、発生した浚渫土砂の埋め立ては、今日の臨海地域の礎となった。 |
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東京港開港以前の明治期から行われていた「隅田川口改良工事」で活躍した「第三芝浦丸」のマスト灯と伝声管。第三芝浦丸は大正15年(1926)に進水、浚渫した土砂を運ぶ土運船の曳舟として活躍した。 |
――耐震化など大規模災害への備えは
東京港では、首都直下地震等に備えて耐震強化岸壁の整備を進めています。耐震強化岸壁は、被災直後の食料品・医薬品等の緊急物資や避難者などの海上輸送を目的とするものと、被災後においても外貿コンテナ貨物の輸送など、経済活動を支えるために必要な物流機能を維持することを目的とするものがあります。どちらも港湾計画に位置づけられており、必要なバース数を確保することとしています。
既存ふ頭の耐震化は、ふ頭利用への影響を考慮することが必要です。東京港のふ頭の利用状況は非常にタイトであるため、新規ふ頭の整備や既存ふ頭の再編などにあわせて、岸壁の耐震強化を実施し、効率的、効果的に事業推進を図っています。
――新旅客船ターミナル整備でインバウンド拡大にも期待がかかります
海外からの訪日客にとって、都心に近接するとともに多くの観光地へのアクセスに優れている東京港には大きな魅力があります。現在東京都では、インバウンド需要に応えるため、世界最大級のクルーズ船も寄港できる新たな客船ふ頭・東京国際クルーズターミナルの整備を進めています。大型クルーズ客船のお客様は、下船後、観光に出かけることが多いですが、都心や首都圏の観光地までは首都高速道路等を通じてバスやタクシー等で短時間で移動できますし、近くには新交通ゆりかもめや東京臨海高速鉄道りんかい線の駅もあります。東京国際クルーズターミナルは2020年7月の開業を予定しており、海外から日本を訪れる多くのお客様の海の玄関口として、重要な役割を果たしていきます。
――京浜港としての東京港の役割は
3港の協力はとても重要だと考えており、連携した取り組みも進めています。例えば、横浜港に入港した船が連続して東京港に入港した場合、かつては2つの港でそれぞれ入港料をいただいていましたが、今は1カ所分だけの入港料となっています。
とはいえ港というものはそれぞれ性格が違います。東京港は生活必需品の輸入が多いという特徴があります。一方横浜港は自動車などの工業製品の輸出も多く、川崎港は工業港としてLNGや原油などの取り扱いが多い中でコンテナも伸長しています。港にはそれぞれ特徴がありますから、3港がそれぞれの役割を担いつつ、引き続き連携して京浜港の発展に向けて取り組んでいきます。
――東京港の今後について
東京港は国際貿易港としての役割を担う一方で、北海道や九州、沖縄などを結ぶ国内貨物定期航路の拠点でもあり、国内各地の生活と産業を支える重要な役割も担っています。これらの航路では主にRORO船(ロールオン・ロールオフ船)と呼ばれる船が就航しており、東京港では品川ふ頭や有明地区の10号地ふ頭、中央防波堤内側地区の内貿ふ頭が一大拠点となっています。国内航路の貨物船も外航船同様に大型化が進んでいることから、それらの船にも対応できるふ頭施設の整備を進めていきます。
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