IT=業務の効率化 ⇒ DX=効率化で変革 DXはデジタル革新とも言い換えられますが、「IT活用などを通じてビジネスモデルや組織を変革する」ことを意味します。 DXの「X」=革新には、産業や企業を変え、未知への挑戦を行う意味も含まれています。 |
東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会で目指すもの |
出典:東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会の設置について 東京都建設局 令和2年7月28日 |
出典:東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会の設置について 東京都建設局 令和2年7月28日 |
第2回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会で、 意見交換の主役は中小建設企業だった |
東京都建設局は、2021年度のICT活用工事の適用対象の拡大に踏み切る。3月2日に開いた「第2回ICT活用工事等推進連絡会」で報告した=写真。これまでICT活用工事への取り組みは、国直轄と比較すると普及拡大が遅れていたが、適用工種拡大とともに、中小企業が取り組めるようないくつかの取り組みを始める点が大きな特徴だ。第2回連絡会では新型コロナウイルス感染拡大防止のため、意見陳述した中小企業からの参加者はリモートで意見交換を行った。
建設事務所の所管エリアとICT土工活用工事実績 |
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会 「ICT活用工事等の推進について」令和3年3月2日 |
土工数量別建設局発注のICT活用工事実績 |
*「H29年度~R2年度12月期」までの対象工事件数を集計 *複数年継続して実施されている工事に関しては工事初年度のみ計上 |
建設局発注のICT実施工事一覧 |
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会 「ICT活用工事等の推進について」令和3年3月2日 |
東京都建設局
2021年度からICT活用工事で3工種追加
普及へ「小規模工事」活用を重視
かぎは非GNSS
東京都建設局は2021年度からICT活用工事の適用対象として新たに、「舗装工(修繕工)」、「地盤改良工(深層)」、「法面工(吹付法枠工)」を追加した。ICT活用へ積極姿勢を打ち出した形。受注者希望型については実績として認定する要件を緩和する。取り組みが始まった2017年度の対象工事のICT活用適用率は8%。その後も2020年度12月期時点で21%と、積極姿勢を打ち出すことになった背景には、ICT活用の普及が拡大しているとはいえない状況がありそうだ。
建設局の土工工事では、全体の約8割が1万m³未満で、特に数量4000万m³未満の割合が多い。その一方で業界からは小規模工事のスケールメリットや非GNSS(全球測位衛星システム)に関する問題指摘もあり、土量規模別で見ると1万m³未満のICT活用適用率は8%にとどまっていた。
そのため建設局は、課題を打開する促進策として、①非GNSS環境での施工、②小規模工事での活用、③現場での活用気運の発揚――の3施策を打ち出し適用していく。
東京都建設局が今年度のICT活用促進策の方針を表明した第2回推進連絡会にリモート参加した中小建設企業の業界側からは、「最初は(ICTを使うことは)自前だけではできない」と指摘があったものの、一方で「習うより慣れろかもしれない」との声もあった。こうした声に対し東京都からは、「経験してもらうことが大事」と今後、中小建設企業・小規模工事への適用拡大に期待感を示した。
都建設局発注におけるICT施工の状況 |
出典:令和2年度第二回東京都建設局 ICT活用工事等推進連絡会 「ICT活用工事等の推進について」 令和3年3月2日 |
ICT施工に関する工種拡大 |
※国土交通省「第11回ICT導入協議会」資料より整理 |
出典:i-Constructionの取り組みについて(ICT施工技術)関東地方整備局企画部 |
ICT=GNSSではありません GNSSとは「Global Navigation Satellite System」の頭文字で、全球測位衛星システムと呼ばれています。これは、米国のGPS、日本の準天頂衛星、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileoなどの衛星測位システムの総称で、人工衛星によって地上の現在位置を決定するシステムのことです。ICT施工の場合、GPSを含む複数のGNSSを併用して精度の高い測量を行う「GNSS測量」が、3次元データ作成だけでなく劇的な作業効率向上につながっています。 ただ、ビルが林立する都市部や斜面や森林がある山間部では、複数の人工衛星から発信された電波が正確に受信できない「衛星との接続困難」がICT活用の障害でした。 しかし、GNSSを使わない「非GNSS環境」でもICT施工は可能です。「ICT工事はGNSS環境がないとできない」という考えを払拭して、「非GNSS環境」でもICT施工ができることを理解してもらうことが必要で、東京都建設局や国土交通省関東地方整備局などがGNSSを使わないICT施工の周知を始めています。 具体的な「非GNSS環境」のICT施工を実現するかぎは、「自動追尾型TS(トータルステーション)の活用」です。建設機械に測量用プリズムを設置して、TSを自動追尾させて位置情報を把握します。ただ、建機1台につきTSが1台必要で、現場条件によっては非効率なことがデメリットです。 |
<GNSS受信イメージ図> [受信状況が良い現場] |
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会 「ICT活用工事等の推進について」 令和3年3月2日 |
東京都 「スマート東京」、DXへ体制強化
4月にはデジタルサービス局発足
スマート東京の推進を支える組織体制 |
出典:スマート東京実施戦略~令和3年度の取組~ 令和3年3月 東京都 |
東京都が2020年2月にまとめた東京版Society5.0となる「スマート東京実施戦略」が今年度2年目を迎え、東京都のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進へ組織体制が強化されている。具体的には、「ICT職」を新設したほか、行政のデジタル化の遅れを克服する一方で、デジタルサービス提供の旗振り役・けん引役となる「デジタルサービス局」も新たに稼働した。
これまでデジタル人材確保について東京都では、特定任期付きや兼業形式などで確保してきたが、2021年度からはICT職の採用を開始し、今年度は30人を採用した。デジタル人材確保を進めることで、建設工事でもICT活用工事拡大にとどまらず、建設DXが加速しそうだ。