東京都など発注者も取り組みとして掲げる「DX」(デジタルトランスフォーメーション=デジタル革新)は、IT活用などを通じて生産性向上や業務改善につながるだけでなく、ビジネスモデルや組織・構造を変革する可能性があるとも言われています。デジタル化もDXの一つです。 |
東京都各局が参加した令和2年度「東京都技術会議」で情報共有・確認した議題は大きく分けて、「コロナ対応を契機とした危機管理と未来への取り組み」と「技術力の維持向上に向けた技術職員の確保と育成」の2つ。このうちコロナ対応を契機とした未来への取り組みでは、目指す姿として「DXをてことして都政のQoS(クオリティ・オブ・サービス)を向上させ、都民の期待を上回る価値の提供」を提示。DXも①情報をデジタルツールで作る②情報のやり取り、共有をデジタルツールで行う③情報の利活用で社会そのものが変わる――の段階を示し、作業や移動の効率化などデジタル化を推進し今後、様々なICT技術の実装を加速化させる姿を描いた。
*QoS:東京都はDXの推進により制度や仕組みの根本まで遡った都政の構造改革を進めることでQoSと、最終的にはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高め、誰もが安全・安心で幸せを享受できる社会の実現を目指している。
出典:第107回東京都技術会議資料 令和3年2月9日 |
「削減・簡素化が可能な工事関係書類」(統一様式) |
出典:第107回東京都技術会議資料 令和3年2月9日 |
「削減・簡素化が可能な工事関係書類」(各局が独自に定めている様式) |
出典:第107回東京都技術会議資料 令和3年2月9日 |
東京のDX加速化
デジタル化推進のかぎは「書類の削減・簡素化」「遠隔管理」と「手続きのデジタル化」
都政の課題について技術的側面から意見交換や調査検討を行う、複数の技術系部局から構成される「東京都技術会議」(2020年度)は、新型コロナ対応を契機に始まった、「新しい日常」を社会経済活動の変革の機会と捉え、東京のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるための対応を検討テーマに設定した。
コロナ対応を契機とした危機管理と未来への取り組みとして挙がったのが、①書類の削減・簡素化②遠隔管理③手続きのデジタル化――といったデジタル化だ。
このうちウェアラブルカメラを活用した遠隔管理は、非接触による現場管理の一環として試行を開始。予定案件を含め建設局や都市整備局などの工事28件で試行している。また、建設局では掘削中のトンネル工事現場における地山分類判定で遠隔管理を試行。監督員が事務所にいながら机上で監督業務を行うことを可能にし、現場への移動時間の大幅削減による効率化につなげた。今年度は本格活用へ向け実施要領の策定を目指す。
東京都技術会議 |
書類の削減・簡素化については、土木・建築・電気・機械の計43件のモデル工事の受注者、監督員へのアンケート結果を技術会議で明らかにした。今後、各局が工事関係書類の基準などを改定し、全工事で書類の削減・簡素化を推進する。
行政手続きのデジタル化については、169手続きのうち、36手続きのデジタル化が完了。道路占用許可など83手続きのデジタル化にも着手している。
行政手続きのデジタル化 |
出典:第107回東京都技術会議資料 令和3年2月9日 |
<ICT・AI 技術等の活用>次世代のポンプ運転支援に向けた流入予測技術の開発 |
出典:第107回東京都技術会議資料 令和3年2月9日 |
都建設局 ICT活用へ3つの促進策 かぎは①非GNSS②小規模③活用気運
東京都建設局が「ICT活用工事等推進連絡会」会合で決めた2021年度方針は大きく分けて、①ICT活用工事の適用環境の把握、②ICTを適用しやすい環境整備、③ICT講習会や研修内容の充実、④新規工種の拡大――の4項目。
このうちICT活用工事の適用対象の新規工種として、「舗装工(修繕工)」「地盤改良工(深層)」「法面工(吹付法枠工)」を追加する。また、発注する前に、GNSS(衛星測位システム)環境の有無などを周知する。
また、ICT活用工事の対象に多い小規模工事での普及については、受注者希望型の実績認定を緩和する。現行では3次元起工測量から3次元データ納品までの5段階のうち2つ以上を実施したものをICT工事として見なしているが、5段階のうち1つでも実施すれば活用工事として見なしていく。工事発注者・受注者へのアンケート結果なども参考にした。
ICT 施工拡大の課題と促進策 |
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会「ICT活用工事等の推進について」 令和3年3月2日 |
今年度の取り組み |
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会「ICT活用工事等の推進について」 令和3年3月2日 |
出典:第7回ICT導入協議会資料 |
東京都 工事発注者・受注者へのアンケートの結果(課題は赤字、メリットは青字) |
※令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会資料から作成 |