1企業あたりのICT受注回数と企業数の推移
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会資料「ICT活用工事等の推進について」
東京都建設局が発注する土工事の約8割は、規模が1万m3未満で、特に4000m3未満の割合が多い。そして、1万m3未満のICT施工適用率は8%と、小規模工事のICT活用実績が少ないことが浮き彫りになっている。そのため2021年度ICT促進策として建設局が打ち出したのが、①非GNSS環境での施工、②小規模工事での活用、③現場での活用気運の発揚――の3施策。
このうち小規模工事での活用へ向け、「ICT施工5段階のうち、1段階だけでも取り組めばICT活用工事として認め、要した費用も計上する」(建設局)取り組みを開始した。「1段階だけ取り組めば良いという点で中小企業にとっても非常に使いやすいのでは。やれるところから取り組んでほしい」と中小企業のICT活用拡大に期待を寄せる。
今秋には業界団体を交えた「令和3年度東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会」がスタートする見込み。建設局では「連絡会では、なぜ(ICT施工に)手が挙がらないのか。企業の方たちに意見を聞きたい」と話す。
出典:令和2年度第二回東京都建設局ICT活用工事等推進連絡会資料「ICT活用工事等の推進について」
小規模工事「割に合わない」
都道府県・政令市(67団体)のうち6割が「ICT施工の取り組みが遅れている」と認識していることが、国土交通省が2020年11月に実施した調査で浮き彫りになった。調査結果は、今年6月に開いたi-Construction推進コンソーシアム会合で提示された。ICT土工の進展状況については、「進展が非常に遅れ」が10%、「進展がやや遅れ」が49%と、都道府県・政令市という大規模自治体でもICT施工が遅れ気味であることが分かった。ICT土工が進まない理由として15団体が「業界がICT土工に消極的」、11団体が「ICT土工を発注したいが対応できる業者が少ない」ことを挙げた。
また「土工量5000m3未満の工事規模でICT施工は割に合わない」との意見も報告された。自治体発注の土工事の大半は小規模工事で、中小企業が施工を担っている。そのため小規模工事での対応が、中小企業のICT活用のカギを握っている。一方、ICT建機や関連機器の購入費助成をしている自治体は、東京都など8団体にとどまった。
【国への具体的な要望】
・機器類の調達や人材育成に係る費用助成制度の拡大や、技術者の確保、育成を目的とした研修等の実施。(技術支援や財政支援)
・ICT施工における適用対象工種の早期公表。
・ICT活用工事に用いる機材購入費などの初期投資費用や、知識習得のための講習会等の開催など、地域の中小企業を対象とした支援を拡充してほしい。
・国の工事を受注している業者と県・市町工事を主に受注している業者のレベルが違うことを理解してほしい。等
出典:i -Construction推進コンソーシアム第7回企画委員会資料 国土交通省
受注者による生産性向上に向けた主な意見
地域を地盤とする直轄工事の受注者へのwebヒアリング等を通じ、現場における生産性向上の阻害要因や更なる改善に向けた意見等を聞き取り。
ICT施工以外の取り組みについて |
●i-Construction=ICT建機というイメージが強い。発注者側もコミュニケーションに関わる部分で時間を要しており、ICT建機を使用する施工の部分だけでなく、コミュニケーション等の施工以外の部分を改善すれば生産性が上がる。 ●プレキャスト化の普及を本格化してほしい。一昨年の台風19号で災害を受け、災害復旧を24時間体制で実施した際に有効であった。 |
発注者への要望について |
●国土交通省HPにはICT土工事例集が掲載されているが、これからICT施工に取り組もうという業者向けの内容ばかりでメリットしか記載されていない。他の施工業者はどこを留意・工夫したかを知りたい。 ●施工者が発注図面の2Dデータを3Dデータに変換するのは簡単であるが、3Dデータが発注図面だと発注者の了承を得るのに時間がかかる。 |
発注方式について |
●受注者希望型では、ICT施工を希望していない会社も受注することができ、ICT施工の件数が増加していない要因となる。 |
出典:i -Construction推進コンソーシアム第7回企画委員会資料 国土交通省
○国と比較し小規模な工事が多い地方自治体へのアンケートによると、約6割の自治体が、ICT施工の取り組みが遅れていると感じ、業界が消極的である等受注者側を理由に挙げている。
○特に、土工量が5000m2未満の規模の工事では、割に合わないとの意見がある。
※1 直轄の一般土木工事においても、土工量5000m2未満の工事は全体の約2割と(※2)一定割合を占めている。
※2 コリンズより令和2年度契約工事を対象に算出
中小建設業に対する発注が中心となる都道府県・政令市(全67団体)に対し、ICT活用工事の実態に関するアンケート調査を実施。(令和2年10月~11月)
【主な結果】
出典:i -Construction推進コンソーシアム第7回企画委員会資料 国土交通省
簡易型ICT活用工事の解説
これは、小規模土工において経費の嵩むレーザースキャナやICT建機を使わなくても、断面管理または面管理で実施可能なICT活用工事です。
現在お持ちのトータルステーションとパソコンに、市販の出来形管理ソフトを導入した、ICT活用工事の断面管理と面管理について、代表例を解説します。
簡易型ICT活用工事をTSで断面管理を実施
手順1 準備するもの
手順2 基本設計データを作成 (②3次元設計データ作成)
手順3 TSで計測 (④3次元出来形管理等の施工管理)
出典:「簡易型ICT活用工事の解説」国土交通省関東地方整備局
※手順4・帳票の作成と手順5・計測結果の提出は、次号に掲載します。