開会式当日の国立競技場周辺 |
大会に先立ち築地市場移転
豊洲市場誕生
東京2020大会だけでなく、大会後も増加が予想される臨海地域の交通需要に応えることにもつながる「東京都市計画道路環状第2号線」のうち、東京都中央卸売市場の豊洲市場開場に合わせ2018年11月に暫定開通したのが、「環状2号 豊洲~築地(約2.8㎞)」。豊洲市場は当初の予定から開場が2年近く遅れた。その結果、環状2号の本線トンネル開通も2020東京大会に間に合わなかったが、今後、臨海部と都心を結ぶBRT(バス高速輸送システム)の本格運用も予定されるなど、今後も臨海地域の交通需要に応えていく。
環状2号道路となる築地大橋。隅田川で最下流にある橋梁だ |
豊洲市場(2016年10月撮影) |
工事調整 業界も大会運営に協力
交通混雑緩和へ現場入場調整・休工日振り替え
東京都が「東京2020大会」開催を控えて始めた取り組みの一つが、大会開催を契機に新しい働き方や企業活動のモデル確立を目指す「スムーズビズ」。このスムーズビズの一環として、東京都と国土交通省など主要公共発注機関が、建設現場の休工日振り替えや工事車両の夜間入場・混雑時間や高速道路回避など、交通混雑緩和へ取り組みを進めた。また公共発注者も、工事発注時期の調整や工事の一時休止に踏み切った。
建設業界は業界団体が窓口となり意見交換や説明会を重ね、個別企業はこうしたさまざまな取り組みに協力した。ただ当初、一時休止など工事調整で発生するコストアップの費用負担について企業が負担することへの強い不安もあったが、東京都は都議会本会議で五輪期間中の都発注工事については経費の上乗せと既契約分についても必要措置を行うことを明言、工事調整の取り組みは大きく前進した。
工事調整に関する説明会(東京建設業協会) |
建設企業は東京2020大会期間中、高速道路や大会関連地域の回避などさまざまな形で、スムーズな大会運営に協力した。写真は首都高・竹橋から大手町・日本橋方面 |
2020大会 その先へ
木材使用量ランキング(林野庁) |
第1位 有明体操競技場(約2600m3)
木材をアーチ状につなぎ合わせた長さ約90mの大屋根に注目
第2位 国立競技場(約2000m3)
木材を利用した軒庇(のきびさし)と大屋根に注目
第3位 選手村ビレッジプラザ(約1300m3)
日本の木材活用リレー 63自治体から木材提供
第4位 有明アリーナ(約800m3)
メインアリーナ及びコンコースの天井面、壁面などに木材を使用
第5位 有明テニスの森公園テニス施設(約460m3)
インドアコート屋根トラス梁などの他、受付カウンターにも木材を使用
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東京2020大会開会式では江戸時代、大工や火消しがうたっていた、「木遣り唄(きやりうた)」に合わせたパフォーマンスが披露された。生活に木を取り入れてきた日本の伝統と心意気が伝わる演出が世界に発信された。五輪に合わせ新設された施設の多くに、全国各地から調達した木材をふんだんに利用し、日本の木の文化と技術力を内外にPRした。
林野庁も木材利用促進のため、「気遣い」ならぬ「木づかい」「木の国のレガシー」と題して、東京オリンピック・パラリンピック競技会場等における木材使用量ランキングを公表している。
完成した有明体操競技場の木造大屋根(2019年7月撮影) |
国立競技場の大屋根 |
選手村レガシー
脱炭素へ先進的地区が誕生
写真手前ブロックが選手村跡。施設はマンション群「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」として販売を開始している。今後の人口急増に合わせ地元自治体の中央区は、小中一貫校の新設などに着手。また新たな基幹公共交通機関軸としてBRT(バス高速輸送システム)の導入や、水素製造と供給を行う東京晴海水素ステーションの整備が進む |
中央区晴海の東京2020大会選手村は、約5600戸超、人口約1万2000人が住む新たな街として生まれ変わる。中央区は人口急増に対応するため、学校など公共施設を整備。さらにBRTや水素製造まで行う水素供給拠点も新たな街に整備されるなど、脱炭素へ向けた先進的な街が誕生する。
レガシーとしてスポーツ・文化の拠点に
レガシーとは
オリンピック・パラリンピック競技大会などの開催により開催都市や開催国が、長期にわたり継承・享受できる、大会の社会的・経済的・文化的恩恵
東京アクアティクスセンター |
海の森水上競技場 |
有明アリーナ 東京の新たなスポーツ・文化の拠点。 |
武蔵野の森総合スポーツプラザ |
新型コロナ影響で「プラス1」踏まえ
大会後のレガシー見据えた取り組み公表
出典:「大会後のレガシーを見据えた東京都の取組」 |
東京都は、「大会後のレガシーを見据えた東京都の取組―2020のその先へ―」を公表した。東京都が新たに整備した競技施設の魅力最大化を目指すほか、多摩地域と有明地域の2カ所をレガシーパークとし、水素など新技術活用による持続可能な街づくりに着手するなど、2020のその先を見据え、取り組むことになる。
代々木競技場 レガシーから世界遺産登録へ
文化的価値と魅力 シンポジウムで発信
1964年に竣工し、同年に開かれた東京オリンピックでは水泳やバスケットボール競技で、2021年の大会でもハンドボールなどの競技会場として使われたのが「国立代々木競技場」だ。建築家・丹下健三の代表作で、高張力による吊り屋根が特徴。五輪レガシーとして世界的に高い評価を受けている。
9月2日、国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会(隈研吾代表理事)が都内で初のシンポジウムを開催。建築家の槇文彦氏、隈氏、建築史家の後藤治氏が講演し、競技場の文化的価値や魅力を発信。隈氏は「1日も早い登録を目指したい」と強調した。シンポジウムに先立って行われた会見でも隈氏は、「建物は高度成長期の日本の勢いを見事に建築のデザインに写し取った世界的な傑作だと思う。世界遺産は建物自身の質だけでなく、世の中の盛り上がりが重要になる」と活動の展開に意欲を見せた。
有明北地区を「有明レガシーエリア」に
有明アーバンスポーツパークを新整備
東京都は、東京2020大会後、有明北地区を「有明レガシーエリア」として、大会で使用した仮設のスポーツ施設などを活用したアーバンスポーツゾーンを整備する。隣接する「有明親水海浜公園」や「有明テニスの森公園テニス施設」、展示場として10年程度の利用が予定されている「有明体操競技場」や、最先端のスマートアリーナとして活用される「有明アリーナ」など、若者に人気のある都市型スポーツ場を整備し、「有明レガシーエリア」とする。