ことばファイル |
*カーボンニュートラル |
出典:資源エネルギー庁ホームページ |
出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 経済産業省他 |
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脱炭素 ピンチはチャンス
江戸時代、由来は以下のようなものらしい。①風が吹くと、ほこりが舞い上がる ②舞い上がったほこりで目を悪くする人が増える ③目を悪くした人が生計を立てるため三味線を習う ④三味線の需要の高まりで猫の皮が大量に必要になる ⑤猫が少なくなりネズミが増加 ⑥増えたネズミが木の桶をかじり、桶がたくさん売れる。
風が吹いたことと、桶が売れることに直接関係はないが、回り回って思いもよらない影響を与えることの格言。
脱炭素へ向けた様々な環境規制や技術革新、各産業で取り組みにかかる莫大な投資は、中小建設企業に直接影響を与えるものではありません。むしろ政府がグリーン成長戦略で建設現場のCO2削減目標数値を掲げたことで、取り組む役割を持つことになりました。
一見すると中小建設企業にとって新たな負担、ピンチと映るかもしれませんが、見方を変えると違う風景も見えます。
まず企業が取り組む省エネは、実現して浮いたコストが自社の利益になります。さらに日本全体が脱炭素への投資加速と規制を強めれば、建築物の新規・リニューアルの需要につながります。
燃料の燃焼で発生・排出されるCO2のこと。人間が活動するのに必要なエネルギーの大半は石炭や石油など化石燃料から得ていて、ここから発生するエネルギー起源CO2が地球温暖化の大きな原因と言われている。
一方、工業プロセスの化学反応(セメント生産が約9割)や廃棄物焼却で発生・排出されるものは非エネルギー起源CO2と言われる。
かぎを握るエネルギー起源CO2排出量は 排出量=CO2排出原単位×エネルギー消費量 原単位:活動量当たりのCO2排出量 ※算定式はこちらの図を参照
日本が「2050年カーボンニュートラル」宣言、その後のグリーン成長戦略策定と予算・政策での様々な後押しを続けているのは、これまでの「温暖化への対応を、経済成長への制約やコストとする時代は終わり、国際的にも成長の機会と捉える時代に突入」したという判断が背景です。それ以前から技術革新=DXは、第四次産業革命からSociety5.0という大きな潮流のなかで進み、もう一方で「従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長へつながっていく」というグリーン成長戦略が生まれました。
カーボンニュートラル=脱炭素が、それまでの「DX」を進化させたほか、新たに「経済と環境の好循環」をつくる産業政策として「GX」を誕生させたという見方もできます。
では排出量と吸収・除去量が差し引きゼロとなる「カーボンニュートラル」は本当に実現できるのでしょうか。最大のかぎは、非電力と電力のエネルギー起源CO2の原単位とエネルギー消費量削減だと言われています。
つまり、排出原単位と消費量を掛け合わせた面積がCO2排出量です。そのため面積をゼロにしていくことが必要です。
そしてこの面積をゼロにするための取り組みが、カーボンニュートラル実現方策です。
具体的には、①省エネルギー、エネルギー効率の向上 ②CO2排出原単位の低減 ③非電力部門の電化 ④ネガティブエミッション(植林や大気中にすでに存在するCO2を直接回収して貯留する技術など)を組み合わせていくことになります。
出典:環境省ホームページ |
ことばファイル |
*温室効果ガス(GHG) |
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削減=売り上げ増
出典:関東経済産業局ホームページ |
建設業界で省エネといえば、建設機械の省燃費運転などが頭に浮かぶ一方、どうしても省エネは環境負荷低減の側面が強いと思います。ただ、コスト削減という経済的メリットの側面で見ると違う風景となります。
例えば図のように、省エネ取り組みで仮に10%削減でコストを30万円削減できたとします。本業で30万円の利益を上げるためには1500万円の売り上げが必要だとすると、省エネ10%は売り上げ1500万円と同等ということになります。
潮流はサプライチェーン排出量
出典:環境省ホームページ |
これまで脱炭素取り組みのかぎは「エネルギー起源CO2」削減のための様々な取り組みと強調しましたが、今後、建設企業にとっても無視できないCO2排出算定手法が「サプライチェーン排出量」算定です。事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関するあらゆる排出を合計した排出量を示します。要は、原材料調達から製造・物流・販売・廃棄までの一連の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量です。 建設企業にとっては、施主だけでなく調達先メーカーなど含めあらゆる取引先がサプライチェーン排出量を算定するとなると、自らも対応しなければならなくなります。しかし、いち早くこうした動きに呼応すれば、調達先に選ばれる可能性も出てくるわけです。
2030年までにカーボンハーフを提言
2019年12月、東京都がCO2排出実質ゼロへ向け「ゼロエミッション東京戦略」を公表。しかしその後、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い気候変動への対応状況がさらに深刻化しているとして、都は2021年、温室効果ガス排出量を2000年比で2030年までに50%削減、さらに再生可能エネルギー利用割合を50%程度まで高めることを表明しました。
アップデートした東京都のゼロエミ戦略とはどのようなものなのでしょうか。ビル・住宅など建設企業にとって関係のある分野について紹介するほか、23年度までの「東京都気候変動適応計画アクションプラン」の内容についても併せて今後一部を紹介していきます。