経済財政運営と改革の基本方針2022 |
出典:経済財政運営と改革の基本方針2022概要 内閣府 |
脱炭素 ロードマップ公表へ
「新しい資本主義に向けた重点投資」は、骨太の方針にもそのまま盛り込まれた目玉政策です。脱炭素へ向け官民投資で150兆円超という金額を明記したのが、「グリーントランスフォーメーション(GX)への投資」です。また、経済産業省がけん引した「クリーンエネルギー戦略中間整理」に基づき、年内に脱炭素へ向けたロードマップを取りまとめることも打ち出しています。
出典:経済財政運営と改革の基本方針2022概要 内閣府 |
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政府の最上位政策 予算にも波及
6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」は別名、「骨太の方針」とも呼ばれています。基本方針の末尾にその年があるのは、毎年この時期に閣議決定されているからです。各省庁や経済界・産業界が毎年、骨太の方針を最も強く意識しているのは、中長期の経済財政運営だけでなく次年度、今回の場合は2023年度予算編成に向けた考え方も盛り込まれているからです。つまり、骨太の方針に盛り込まれたキーワードを使った施策や事業でなければ、予算確保が難しいと言えそうです。
骨太の方針は2001年、聖域なき構造改革を打ち出した小泉政権が、経済財政諮問会議で政策の基本骨格として決議させたのが始まりです。その後、デフレ経済からの脱却を前面に押し出した安倍政権は、骨太の方針に成長戦略を盛り込みました。岸田政権は肝いりの成長戦略「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を骨太の方針と同じ日に閣議決定。骨太の方針と新しい資本主義実行計画の中身に違いはありません。2つの政策はコインの裏表です。今後、各省庁が財務省に提出する来年度予算要求も2つの施策を元にしていると予想されます。
岸田政権 カーボンニュートラルに関係する立案施策方針 |
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経済成長の原動力は気候変動にも対応
岸田政権の「新しい資本主義」は、官民が協力して成長と分配を実現し、好循環が生まれることを目指しています。具体的には、成長によって企業の収益増や歳入増による原資を稼ぎ出して分配を可能にし、分配が需要(消費や投資)を増加させ成長力が強化されることで次なる成長へ向かうという構図です。その成長戦略として掲げられているのが、①科学技術・イノベーション②デジタル田園都市国家構想などによる地方活性化③カーボンニュートラルの実現④経済安全保障――の4つです。
筆頭として挙げられている「科学技術・イノベーション」を議論する総合科学技術・イノベーション会議は、担当大臣とともに総理大臣がリーダーシップを取る、各省より一段高い立場で総合的にイノベーション政策の企画立案や総合調整をする会議体です。建設関係も対象となったSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)を進めているほか、「統合イノベーション戦略2022」もまとまっています。また、所管は経済産業省ですが、カーボンニュートラルへ向けてグリーンイノベーション基金もスタートするなど、「イノベーション」が政策キーワードの一つになっています。
グリーンイノベーション 基金プロジェクトの進捗状況 | (6/13時点) |
出典:経済産業省ホームページ |
グリーンイノベーション事業 建設業も進む
世界の潮流になりつつあるカーボンニュートラルへの取り組みは、革新的な技術開発競争を柱にした国家間競争の様相も呈しています。日本では2020年度第3次補正予算で2兆円の「グリーンイノベーション基金」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成されました。政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期間の継続支援が必要な領域を対象に、具体的な目標と達成へ向け10年間、研究開発・実証から社会実装まで継続して支援するものです。
対象プロジェクトは19事業ありますが、建設業に直接関係のある事業も含まれています。「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」です。具体的には、2050年カーボンニュートラル実現に欠かせず、大規模なCO2削減が期待される「コンクリート・セメント分野のカーボンリサイクル」(詳細はこちら)です。例えばコンクリート分野でCO2排出削減・固定量の最大化とコスト低減をめざす取り組みが注目されているのは、この技術が国際的な競争となっているネガティブエミッション(大気中の温室効果ガスを回収・除去する技術の総称)で、温室効果ガス排出を正味ゼロにする、つまりネットゼロ実現の効果的手法だからです。他国に先駆けて社会実装すれば、世界への技術拡大に期待が膨らみます。
社会実装スケジュール |
出典:グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画 令和3年10月15日 |
CO2を用いたコンクリート等製造技術の開発 (コンクリート分野) (国費負担額:上限359.4億円) |
<CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの用途例> |
CO2を用いたコンクリート等製造技術の開発 (セメント分野) (国費負担額:上限208.4億円) |
<CO2回収型セメント製造プロセス> |
出典:経済産業省ホームページ |