政府の2050年カーボンニュートラル(炭素中立)方針を受け、国土交通省は8月2日に社会資本整備審議会・交通政策審議会の技術部会を開催し、インフラ分野における2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みをテーマに議論を行いました。技術部会では、2026年度まで社会情勢や最新の技術動向を踏まえた技術政策の方向性を議論し、その成果は2027年度から始まる「第6期国土交通省技術基本計画」に反映させる予定です。
また、インフラ分野は「建設段階」と「維持管理段階」のトータルでカーボンニュートラルを目指す考えを強調しました。建設段階でゼロカーボンとならない分を、維持管理段階での取り組みでCO2吸収量などによりカーボンマイナスとして相殺するのが特徴です。
出典:2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要 環境省 |
ことばファイル |
*脱炭素化支援機構 |
国土交通省は8月2日の会合で、インフラ分野における温室効果ガス(GHG)排出量の試算を提示しました。建設業における建設現場でのGHG排出量【Scope1(事業者の直接排出)+Scope2(事業者の間接排出)】は全排出量の約0.7%。一方、建設材料や建設関連貨物などサプライチェーンを含めた建設現場におけるGHG排出量(Scope3)は全排出量の約1割強であり、建設現場の脱炭素化は「建設業としての取り組み」と「サプライチェーン全体の取り組み」の両方を進めていく必要があると強調しました。
公共土木では発電・CO2吸収量も含めたトータルでカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めるため、「建設」と「維持管理」という2つの段階に分けて取り組みを整理しました。建設段階ではDX(デジタルトランスフォーメーション)などを使ってもカーボンゼロとすることは難しいけれど、維持管理段階の様々な取り組みによりカーボンマイナスを実現してトータルでゼロにする考え方です。
出典:社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会 第29回技術部会 国土交通省説明資料 |
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CN、DX、脱炭素化 技術政策で支援
5年間で政府の研究開発投資総額30兆円、官民合わせた研究開発投資総額120兆円を掲げた「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(2021~2025年度)と社会資本整備重点計画、交通政策基本計画などの関連計画を踏まえ、国土交通省が技術研究開発を進めるうえで必要な視点や目指す方向性を提示したのが「第5期国土交通省技術基本計画」(2022~2026年度)です。この中には▷デジタル化の加速、DX推進▷2050年カーボンニュートラル実現に向けた動き――も盛り込まれました。
そして2027年度からの次期技術基本計画への反映を視野に入れた議論が始まりました。社会資本整備審議会・交通政策審議会の技術部会で、国土交通省はインフラ分野のカーボンニュートラルへ向け、▷ICT施工▷建設機械▷建設材料――それぞれの脱炭素化など具体的な取り組みを示しました。
2050年カーボンニュートラルへ向けた本格的な議論は年内にも2回目が行われる予定で、DXがテーマとなります。ICT施工は建設現場の生産性向上に寄与するだけでなく、脱炭素化でも重要な役割を担っています。
インフラ分野における温室効果ガス排出量(国土交通省試算) |
出典:社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会 第29回技術部会 国土交通省説明資料 |
出典:社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会 第29回技術部会 国土交通省説明資料 |
脱炭素経営に取り組む中小企業のメリット |
*環境省資料から作成 |
国土交通省の次期技術基本計画でも、カーボンニュートラルへ向けた取り組みで大きなかぎを握る存在が「中小企業」です。
インフラDXの1つである「ICT施工」は、建設現場の生産性向上だけではなく、働き方改革にもつながるとして期待が集まっています。今後は、中小企業が施工を担う小規模現場へのICT施工導入と普及・拡大が、インフラDXだけでなく脱炭素取り組みという側面からも大きな課題となっています。
ICT施工による施工の低炭素化 |
出典:社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会 第29回技術部会 国土交通省説明資料 |
9月26日から10月7日まで、GX(グリーントランスフォーメーション)に関する国際会議が東京で開催されます。いわゆる「東京GXウイーク」では、水素や燃料アンモニアといったエネルギー分野を始め、企業の非財務情報開示に影響を与える気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)サミットなど、オンラインを含む10の会合が、わずか12日間の間に集中して開かれます。このうち、10月7日に開催される国際GX会合は、初会合が東京での開催となります。
各国閣僚や各分野をリードする世界の有識者や指導者が集まり、温室効果ガス排出削減を経済の成長と発展につなげるGX実現へどのような議論が展開されるのでしょうか。会合日と内容は下記のとおりです。