新たな東京の被害想定の対象とした地震 |
出典:東京都の新たな被害想定 東京都防災会議 |
東京都防災会議がまとめた「首都直下地震等による東京の被害想定報告書」では、最大規模の被害が想定される「都心南部直下地震」による建物被害は、住宅の防災対策がこの10年間で進んだことから約36%減少すると予測した(図表1)。
また、新たな試みとして、「災害シナリオ」を盛り込み、被災者が地震発生後に直面する状況を時系列に沿って提示した。提示内容は
図表1 最大規模被害時の被害想定新旧比較 |
*前回想定は東京湾北部地震の被害量。今回想定は都心南部直下地震の被害量。建物被害・揺れ等には、液状化、急傾斜地などの被害を含む |
①インフラ・ライフラインの復旧に向けた動き
②救出救助機関等による応急対策活動の展開
③避難所での避難生活
④住み慣れた自宅等での避難生活
⑤帰宅困難者を取り巻く状況
の5つ(こちらに①を掲載)。
東京都は被害想定見直しを踏まえ2023年2月、総力を挙げて防災対策を進める上での羅針盤となる「東京都地域防災計画 震災編修正素案」を公表。減災目標として、2030年度までに人的・物的被害を半減させることを掲げた。
地震のメカニズム |
出典:東京都防災ホームページ |
●防災都市●
災害に強い都市、いわゆる「防災都市」づくりのカギとして、「不燃化」と「特定整備路線(延焼遮断帯、避難・救援路の整備)」が挙げられます。火災による被害を抑制するためには出火を抑える取り組みが重要ですが、一方で延焼を防止するためには、市街地整備を進め、まちの不燃化を進めることが重要です。まちの不燃化=防災都市には、延焼遮断帯の形成や避難場所の確保に加え、緊急輸送道路の機能確保が大きなカギを握っています。
防災・減災対策による被害軽減効果の一つとして挙げられるのが、「耐震化率の向上」だ。東京都の住宅の耐震化率は2020年時点で92%。推計では全ての建物が1981年の新耐震基準を満たした場合(耐震化100%)、全壊棟数と死者数は現況より約6割減少する。2000年基準による耐震化が実現すると、さらに約5割減少するとした(図表2)。
火災被害の抑制として、「感震ブレーカーの設置率」を効果推計の条件にした。現況の8.3%が25%(促進①)となった場合、焼失棟数、死者数ともに現況に対し約7割減少、設置率が50%(促進②)まで高まれば、さらに約6割減少すると推計している(図表3)。
今後の耐震化率の向上(耐震化100%)によって地震の経済被害(直接被害)は現況の約25%、金額にして約5.5兆円減少すると推計した。耐震化に加え、感震ブレーカー設置率を50%まで引き上げるなど出火対策向上を進めるとさらに約3.4兆円、現況よりも最大約9兆円減少するとした。首都直下地震への備えとして、被害軽減へ対応しなければならないことはまだまだありそうだ。 | |
出典:首都直下地震等による東京の被害想定報告書 東京都防災会議 |
出典:東京都の新たな被害想定 東京都防災会議 |