2024年1月号巻頭は、「直面する時代の転機」と題して2024年を展望しました。具体的には、①工事量、②収益、③新制度、④人口減少、⑤慣習――を「先を見る5つの視点」として挙げました。この5つの視点の底流には、「働き方改革」と「生産性向上」という2つのキーワードがあります。このうち「働き方改革」については、5年間の猶予期間を経て4月からいよいよ「時間外労働の上限規制」の建設業への適用が始まります。
「時間外労働の上限規制」適用に連動する形で、法律、制度、労務単価、積算・歩掛かりは言うに及ばず、契約の慣習までが大きく変わろうとしています。中でも「公共工事の品質確保促進法(品確法)」「建設業法」「公共工事の入札及び契約の適正化法(入契法)」「測量法」を一体的に改正する、いわゆる「担い手3法」の改正は、建設業が「地域の守り手」の役割を果たしながら、時間外労働規制などにも対応しつつ、処遇改善や働き方改革、生産性向上に取り組むことを後押しする役割を担っています。
巻頭企画では『時代の転機 これからの建設業』を大テーマに、さまざまな切り口で、建設業の現在地とこれからを展望していきます。
「2月2日に開かれた品確議連総会。この場で固まった改正骨子は、自治体発注工事が受注の柱となっている地域建設業が取り組む働き方改革を自治体がこれまで以上に後押しすることが期待されている」 |
今国会に上程が予定されている「担い手3法(品確法、建設業法、入契法+測量法)改正案」は、自民党の公共工事品質確保に関する議員連盟(会長・根本匠衆院議員)を中心とした「議員提出」と「政府提出(閣法)」の2本立てとなる。
具体的には、自治体などに大きな影響を与える「入札契約適正化法(入契法)」という1つの法律に対し、議員提出と政府提出の2つの改正案がそれぞれの視点で提出される見込み。「議員提出」の入契法改正案では発注者支援として、国が地方公共団体に対し、助言・援助に加え「勧告権」まで付与することが特徴だ。
提出法案を整理すると、議員提出予定は、▷品確法▷入契法▷測量法――の3法で改正案を提出。担い手3法関連の政府提出予定では、▷建設業法▷入契法――の2法を改正する。
出典:品確議連総会資料 |
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2024年2月2日、品確議連総会で衆院法制局が説明した品確法等の、一部改正案概要の目次は以下のとおり(Ⅰ-四-1.発注者に対する支援、Ⅱ入札契約適正化法の改正部分は概要全文のまま(太字))。
Ⅰ 公共工事品質確保法
一 公共工事等に従事する者の労働条件の改善
1 休日取得、労務費支払の実態把握と必要な施策実施
2 施工時期の平準化等に係る関係部局間の連携
3 週休2日の適切な実施
4 担い手の中長期的な育成及び確保
二 持続可能な地域建設業等
1 「地域の守り手」を維持するための発注方式
2 適切な価格転嫁
3 地域建設業者等への技術の普及・調査等の担い手の育成等
4 災害時の緊急対応の充実・強化
三 技術開発の推進・新技術の活用
1 新技術の社会実装の促進等
2 民間技術力の結集
3 技術開発に対する継続的な支援
4 デジタル技術の活用及び脱炭素化
四 その他
1 発注者に対する支援
(1)国及び都道府県は、発注者の発注関係事務の適切な実施に必要な知識又は技術を有する職員の育成のため、研修機関が実施する研修の活用の促進、講習会の開催、実施する研修への受け入れ等の措置を講ずるよう努めなければならないこととすること。
(2)国は、発注者の発注関係事務の実施の実態の把握及び公表に努め、当該実態を踏まえ、発注者に対し必要な助言を行わなければならないこととすること。
2 国民の関心と理解
Ⅱ 入札契約適正化法
1 適正化指針に定める事項の追加
各省各庁の長等による公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(適正化指針)に定める事項に「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する事務を適切に行うための必要な体制の整備に関すること」を追加する。
2 発注者に対する支援等
(1)国土交通大臣及び財務大臣は、各省各庁の長又は特殊法人等を所管する大臣に対し、適正化指針に照らして特に必要があると認められる措置の的確な実施に必要な勧告を行うことができることとすること。
(2)国土交通大臣及び総務大臣は、必要と認められる地方公共団体に対し、適正化指針に照らして特に必要があると認められる措置の的確な実施に必要な助言、勧告又は援助を行うことができることとすること。
出典:建設キャリアアップシステム処遇改善推進協議会資料 |
みなし証明3月末 建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録されている職人の処遇改善につながる、「技能者のレベル判定能力評価」の経過措置として設けられている『経歴証明(みなし証明)』の証明期間が3月末で終了する。みなし証明とは、CCUSに蓄積されていない技能者の経験を評価する方法。事業者登録されている所属事業者などが、能力評価申請者(技能者)のCCUS利用前の就業日数と職長・班長としての就業日数を証明するもので、事業主のみなし経歴証明とも呼ばれる。 |
事業者登録5年 2019年4月から本格運用が始まった、CCUSの事業者登録の更新手続きが始まっている。事業者登録の有効期限は登録日から5年後の登録月の月末。また本格運用前の2018年度に登録した事業者の有効期限は特例として2024年3月31日。本格運用前の限定運用時(2018年5月から2019年3月まで)に登録した事業者は3月中に登録更新手続きを行う必要がある。 |