公共工事品質確保促進法(品確法)、建設業法、入札契約適正化法(入契法)の3法改正による、いわゆる「第3次担い手3法」が6月12日に成立しました。持続可能な建設業の実現を目的とした「第3次担い手3法」は、発注者・元請け・下請け・技能労働者それぞれの対応を求めるものですが、中小元請けにとってはこれまで解決の糸口が見つからなかった課題の解消へ期待が持てそうです。
第3次担い手3法は、▷地域建設業等の維持、▷処遇改善、▷労務費へのしわ寄せ防止、▷働き方改革・生産性向上――が柱となっています。公共調達のあり方に限定した「品確法」と「入契法」、公共工事だけでなく民間建設工事の関係者までカバーする「建設業法」を一体的に連携させて運用しようとしているのが最大の特徴です。
7月号では中小元請けから見た「第3次担い手3法」の視点で、歓迎すべき点と注意点をわかりやすく説明します。
「6月12日に参議院で第3次担い手3法が成立した」 |
入契法 国に新たに勧告権
自治体に助言・援助
第3次担い手3法で大きな話題の一つは、「中央建設業審議会による標準労務費の勧告」などを柱とした労働者の処遇改善です。そもそも日本の労働力人口の縮小が、「担い手確保・育成」を取り組み始めた背景にあるので、処遇改善は担い手確保・育成への一丁目一番地と言えるでしょう。
一方、中小元請建設企業にとって大きな転機になりそうな動きもあります。その一つが、公共工事を主戦場とする中小元請企業が直面する、「発注者の理解と対応への問題」です。地方公共団体が予算を理由に契約後の変更協議に応じなかったりすることで、中小元請建設企業は現場の週休2日の取り組みも消極的にならざるを得ないこともありました。
今回、入契法の改正で国が地方公共団体に対し新たに、勧告権と助言・援助できる規定が盛り込まれたことで、国の自治体に対する強い指導だけでなく、自治体対応の好転も期待できそうです。
入契法 第二十条の見出しを「(要請等)」に改め、同条に次の二項を加える。
(要請等)
第二十条
3 第一項の規定による要請をした場合において、国土交通大臣及び財務大臣は、前条第一項の規定による報告を踏まえ、適正化指針に照らして特に必要があると認められる措置の的確な実施のために必要があると認めるときは、各省各庁の長又は特殊法人等を所管する大臣に対し、必要な勧告をすることができる。
4 第二項の規定による要請をした場合において、国土交通大臣及び総務大臣は、前条第二項の規定による報告を踏まえ、適正化指針に照らして特に必要があると認められる措置の的確な実施のために必要があると認めるときは、地方公共団体に対し、必要な勧告、助言又は援助をすることができる。
「要請」と「勧告」
第3次担い手3法の一つ入契法改正前、国は地方自治体に対し、適正な入札・契約改善を促す手法として「要請」しかありませんでした。「要請」は、指導のような強い対応ではありません。
これが法改正に伴い、改善を求めるレベルが上がり、「要請」よりも強めの「助言」や、さらに強く〝こうしなさい〟と促す「勧告」が導入されたわけです。なお、勧告、助言または援助に関する詳細は今後決めていきます。
「中建審は今後労務費の基準を作成・勧告する」 |
業の規制法である「建設業法」と公共調達のあり方を規定した「品確法」と「入契法」、この3つは連動していますが、その中で強制力はない「努力義務」と強制力がある「義務化」のように建設業法と入契法で使い分けられていることが特徴です。具体的には資材高騰顕在化の「契約後のルール」として、受注者が契約変更協議を申し出たとき、建設業法では「注文者は誠実に協議に応じる努力義務」が明記されたのに対し、入契法では公共工事発注者は「誠実に協議に応じなければならない」と義務化されました。
ただ、建設業法は規制法ですから、適正な労務費等確保と行き渡りに問題があれば、企業名公表や指導監督の対象となることに注意が必要です。