―― 一般社団法人への移行をどう考えますか。
社会貢献的活動の中でさらなる会員メリットを
一般社団法人に移行して、一番大きな特徴は、これまでの(社団法人の)規制がなくなることです。言い換えれば、当協会の活動は、創意工夫によって自由な事業選択ができますから、これまで以上に自由になるということです。
そのメリットをどう生かし、会員のメリットにつなげるか、柔軟な事業展開をしていくことを、私たちは考えていかなくてはなりません。
そのうえで今後、協会として何をするかについてですが、大前提は会員のメリットをより強く引き出すことです。ただ、公益的活動を行ってきた当協会の立場からは、会員のメリットだけを考えれば良いというわけにもいきません。
つまり、東建は会員の皆さんにどう貢献できるかということと、社会貢献的な活動をするなかで、会員のさらなるメリットを引き出すということを考えていきたいと思います。
―― 具体的な活動としては、何がありますか。
具体的には、「建設業の継続性」、「防災・減災」、「発災時の対応体制の整備」の3つです。
「建設業の継続性」は、会員のメリットを引き出すにしても、社会貢献活動を行うにしても、建設業の継続性に力点を置いた活動が必要です。まず、健全な経営基盤を確立することと、全てのステークホルダー(利害関係者)と信頼関係を築き、魅力ある建設業にすることが欠かせません。
そのためには、まず、契約制度改善へのさらなる努力と、労務賃金をはじめとする職場環境の改善整備が重要です。当然、社会保険未加入対策促進の取り組みもこの中に含まれます。ただ、なぜ未加入なのか、この根本的な課題が解決されなければなりません。口で言うほど簡単な話ではなく、きちんと進めていかなくてはなりません。
さらに、若年入職者問題への取り組みも欠かせません。若年入職者を増やしていかなければ、建設業の継続性も明日もないわけで、このことをしっかりアピールしていきたいと思います。
2つ目の「防災・減災」ですが、当協会は昨年7月に東京都と「緊急輸送道路沿道建築物の耐震化に向けた連携に関する協定」を締結しました。昨年度にも増して、耐震改修工事に会員と一体となって取り組んでいきます。協定に基づいて活動を行うことが、都民の生命・財産を守るという建設業の社会的使命を果たすことになるからです。
また、当協会は「耐震化相談窓口」も開設していますが、問い合わせ件数も増えてきており、これが最終的に会員の改修工事の受注につながればと期待しています。
発災時対応体制を築く行政に沿って支部区割り
3つ目の「発災時の対応体制の整備」では、当協会の支部を9つから7つへ見直して対応します。具体的には、東京都建設事務所の所管区域に合わせて、区部の8つを6つの支部に再編します。消防庁の方面本部も都建設事務所と同じような区割りなので、災害時の協議がしやすくなります。
また、災害発生時の対応では指示命令系統が一本化されないと、建設企業も動きづらいこともあり、今後、災害対応のネットワークとして東京都や国土交通省関東地方整備局を含めた体制の構築を進めていかなければなりません。
災害発生時に道路などのインフラが影響を受けますが、建設企業は保有している建設機械が遠隔地にあるケースもあります。その場合、建設機械をどのように活用するかといった細かなところまで話を詰めておかないと、いざという時に対応ができなくなるというのが理由です。
例えば、地下鉄や地下街などの地下構築物の被災や建物の倒壊など、都市部ゆえのさまざまな問題が想定されるため、事前に綿密に打ち合わせる必要があると考えています。
―― 一般社団法人の移行にあたって、新たなキャッチコピーを作成しました。
今回、「TOKYOのみらいへ――つなぐ・つながる」をキャッチコピーとして制定しました。
「つなぐ」ということは、みんなが主体的に動かないと「つなぐ」ことにならない。だから、それぞれの立場の人たちが、それぞれの立場で主体的に積極的に行動する――これが「つなぐ」ということで、その結果が「つながる」ということです。
「つなぐ」ことが、結果として「つながる」ということは、言い換えれば、「つなぐ」ために、みんなの気持ちが一緒になって「つながる」ということです。これを協会と会員、都民の関係として表せば、「東建、会員、都民が強くつながっていき、東京のより良い未来に対し、建設業がつながる」ということです。
―― 新年度の事業計画についてはどう考えますか。
事業計画の基本方針は「災害に強いまちづくり」と「人材の確保・育成」の2つを重点事項に据えました。
業界の明日のため人材確保は喫緊
1つ目の「災害に強いまちづくり」では、東京都の各局や国土交通省関東地方整備局とも締結している災害協定の実効性確保に向けて、より連携を密にしていきたいと思います。さらに、都民の生命・財産を守るための広報活動にも力を入れるほか、当協会内に設置した「耐震化相談窓口」も継続していきたいと思っています。
2つ目の「人材の確保・育成」については、これまでも若い人を対象にした現場見学会や、出張講座などいろいろな形で学習のサポートをしていますが、これからも建設産業に興味を持ってもらえるよう、イメージアップを図ります。また、建設業の中身と健全性もアピールしていかないと、人材確保にはつながりません。
強調したいのは、いまの建設業界にとって喫緊の課題は「人材確保」だということです。仮に元請けが人材確保問題に対応できても、現場を支える技能労働者がいなければ、現場は成り立ちません。この問題は元請け・下請けを問わず、建設業界全体の問題だととらえるべきです。意見交換や当協会の提言などを通じ、行政と一体となって人材確保問題について対応していきます。
―― 新年度の活動として、そのほかどのようなことを考えていますか。
これまでの意見交換会でも、予定価格の上限拘束性撤廃や最低制限価格引き上げなど、低価格入札、いわゆるダンピング対策を、行政に対して強く改善要望しています。はっきり言えば、適正価格で落札できる入札方式を今後も強く求めていきたいと思います。
このほか、今年度の大きな話題として2020年東京オリンピック・パラリンピック招致活動があります。ぜひ招致できるよう、われわれ建設業界として今後も協力していきたいと思っています。
当協会は4月1日から、一般社団法人 東京建設業協会として、新たな一歩を刻みました。一般社団法人へ移行したのは、政府が2008年12月から施行した「新公益法人制度」に対応したものです。2013年度は「災害に強いまちづくり」と「人材の確保・育成」の2つを、重点事業として取り組みます。
一般社団法人への移行に伴って、事業計画の構成(表)と、支部割を見直しました。
具体的には、2013年度事業計画では、公益目的支出計画の実施事業として位置づけた「継続事業」と「その他事業」に分類しています。
これまで当協会の事業計画は、テーマ性を重視した構成でしたが、旧主務官庁(東京都)が公益的事業と認めていた事業を、一般社団法人移行後、公益目的支出計画が終了するまで継続事業として行わなければならないための対応として、事業を整理しました。
「新公益法人制度」とは
「新公益法人制度」とは、民による公益の増進をめざすことを目的に定められた。明治31年(1898)の民法施行以来110年ぶりの大改革と言われる。
従来の社団法人・財団法人は、主務官庁制と許可主義が特徴で、主務官庁が法人設立と公益性の判断を行っていた。
2008年12月から施行された「新公益法人制度」では、法人の設立と公益性の判断を分離。既存公益法人を、「公益社団法人・公益財団法人」と「一般社団法人・一般財団法人」の2つに整理した。
「一般社団法人・一般財団法人」が登記だけで設立が許可される一方、「公益社団法人・公益財団法人」は、民間有識者が審査し、行政庁が公益性を認定する。「公益社団法人・公益財団法人」は、公益目的事業の割合が決められており、認定されるハードルが高いが、公益性認定と連動した事業は非課税の税制優遇がある。
また、新公益法人制度施行以前から、社団法人や財団法人格を保有していた既存公益法人は、2013年11月末までに、「公益社団法人・公益財団法人」か「一般社団法人・一般財団法人」のいずれかに移行する5年間の移行期間が設けられた。申請しなかったり、申請が11月末以降に認定・許可されなかった既存公益法人は「みなし解散」となる。
内閣府調査によれば新公益法人制度発足時、全国で2万4317あった公益法人のうち、2万8000既存公益法人が以降申請する見込み。今年2月末時点での申請率は約9割に上っている。
(一社)全国建設業協会傘下の都道府県協会のほとんどが「一般社団法人」となる見込み。
事業計画の構成
〔継続事業〕
- (1)セミナー、展示会等の開催を通じて建設業に関する普及啓発を行う事業
- (2)冊子等の発行、IT技術の活用等により建設業に関する普及啓発を行う事業
- (3) 建設業における雇用・職場環境の改善、入職促進に関する情報提供等を行う事業
- (4) 行政機関との協力により建設業の向上・発展と災害対策・復旧支援等を行う事業
〔その他事業〕
- (1)会員相互の情報交換、交流等
- (2)建設業退職金共済制度の普及促進等(新規)
- (3)その他