1. 建設業を取り巻く環境の変化
現在、政府・民間を含めた建設投資額(土木・建築)は、1992年度の84兆円をピークに年々減少しており、2010年度には、ピーク時の約50%まで減少した。その後は、東日本大震災の復興需要や民間投資の回復により増加傾向となっている。2021年度の政府建設投資は前年度比2%増の24兆5,300億円、民間投資は前年度比約3%増の38兆1,200億円となる見通しである。
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図1-1 建設投資の推移
出典:(一社)日本建設業連合会「建設業ハンドブック2021」
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加えて、図1-2に示すように、建設業界の固有の課題として就労者の高齢化、就労者数の減少、低い労働生産性、環境問題、働き方改革関連法への対応などを抱えている。また、CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンスの強い要請、各種法制度改正、サスティナブルな社会の実現等々、外部環境の変化は著しい。
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図1-2 建設業を取り巻く環境変化と経営課題
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そのため、建設業には生き残りを図るための経営の抜本的な見直しが求められており、DXを推進し、受注力・営業力の向上、コスト競争力の強化、事業構造の改革、生産性の向上、管理業務の効率化、法制度改正への対応等々具体的な取り組みが必要となっている。
一方、ICTは飛躍的に進化している。特に移動通信については、2020年12月末現在では契約数が約1億9千万以上に達し、人口普及率は 約151%となっている。我が国におけるインターネット利用の中心は、パソコンからモバイルに移行 しているといえる。2020年時点では、スマートフォン世帯保有率は8割を大幅に超えている。また、通信速度はメガレベルからギガレベルへと進化し、大容量の動画コンテンツであったとしても視聴することが可能となった。また、クラウド、ビッグデータ、IoT、AIやVR/AR、ドローンといった新しい技術とも結びつき、新たなサービスが登場した。
これらICTは建設業の企業内システムにも広く適用され、各社の情報システムはレベルアップしている。共同作業を支援するグループウェアや各種情報のデータベース化による情報の利活用、CAD(コンピュータによる製図)などが日常的に活用されるようになっている。また、通信技術の発達はドローンやロボット等に活用され作業現場の仕事の仕方そのものが変化、進展しつつある。
このような状況下、多岐な経営課題を抱えている建設業において、特に働き方改革を行うためにも、さらなるICTの有効活用は重要なテーマでありICT活用に注力する必要がある。
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