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建設IT読本2016

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4. 建築現場でのIT活用

(1)入退場管理システム
入退場管理システムとは、磁気カードやRFID、生体認証といった認証技術を使い、作業所への入退場手続きを合理化するシステムである。
入退場記録は随時管理サーバに蓄積されていき、事務所から入場者や残留者の正確な把握ができる。また入退場時刻の記録も取れるため資材搬入管理に使われることもある。
以前は、設置コストや事前登録作業が必要といった面から大規模作業所での活用がほとんどであったが、安価なバーコードを利用したシステムや、カードリーダーの設置のみで済むASPタイプのシステムも出てきており、導入しやすくなってきた

図4-1 WEBカメラ
図4-1 WEBカメラ

(2)作業所Webカメラ
作業所内の仮設電柱等に遠隔操作のできるWebカメラを設置し、インターネットを通して作業所の映像を見ることができるシステムである。
土木工事の場合は河川の状況監視等に使われることも多いが、建築工事の場合は、施主や工事関係者に工事の進捗状況を見せるライブカメラ的な役割で設置されるケースが多い。
設置しておくと、いつでも現場の状況を確認できるため、搬入車両の確認や、休日の現場監視にも使用できる。また、設置することにより作業所の美化や不安全行動減少につながる上、防犯対策にも効果がある。

図4-2 配筋検査システム(富士フィルム「配筋ショット」)
図4-2 配筋検査システム
(富士フィルム「配筋ショット」)

(3)配筋検査システム
配筋検査は建築工事における品質管理上重要な検査であり、全箇所・全数にわたる膨大な検査と確実な工事写真の記録が必要となる。そこで、ITを利用することで確認作業を効率化し、検査漏れ防止にもつながる配筋検査システムが注目されている。
配筋検査システムでは、構造図や検査リスト・検査項目を登録した携帯情報端末やタブレットPCを利用して検査を実施する。図面上に検査箇所が表示され、配筋リストや検査項目も参照できるため、効率良く検査を進めることができる。また検査の進捗状況もひと目で分かるため検査漏れも防止できる。
配筋写真の撮影に関しても、携帯情報端末の内蔵カメラやメモ機能のあるデジタルカメラと連携させることで黒板への記載を簡略化することができる上、配筋図と記録写真が紐付いているため報告書作成に手間がかからない。

(4)仕上検査システム
集合住宅等の仕上検査では、部屋数の関係から複数のグループに分かれて検査することが多く、事務所に戻ってからの集計作業や業者別の作業指示書作成にはかなりの手間を必要とする。仕上検査システムを利用するとこういった事務所に戻ってからの集計作業が不要となる。
仕上検査システムでは、携帯情報端末やタブレットPCが用いられ、画面に表示された図面上でダメ拾いを行う。現地で場所や工種、指示事項の入力を済ませているため、何人で検査を行っていても事務所に戻ってからの集計作業は一瞬で完了する。

(5)地震警報システム
建築工事中の建物は非常に不安定な上、仮設足場や揚重機等に至っては、地震が発生した際に倒壊や吊荷落下の危険性すらある。そこで気象庁の緊急地震速報を利用して事前に作業員に地震の到達を知らせることで、作業員の安全確保を図ろうという取り組みが行われている。
地震警報システムでは、事前に作業所の場所を登録しておく。地震が発生すると、気象庁の緊急地震速報のデータを元に被災の恐れのある地域の作業所に対して警報が配信され、館内放送で作業員に地震の発生を知らせることができる。
地震が到達する数秒前に知ることができれば、作業員は作業を中断することができるし、吊荷から離れることもできるため、作業員の安全確保には非常に有効と期待されている。
仕組み上、緊急地震速報は震源に近すぎると間に合わないとされてきたが、緊急地震速報のデータとは別に地震計を内蔵し、直下地震に対応したシステムも出ている。

(6)スマートフォン関連システム
スマートフォンとはPDA(携帯情報端末)に通信機能や通話機能を内蔵させたものである。日本でもApple社の「iPhone」が人気となり、近年各社から様々な端末が発売され、市場の拡大を見せている。
スマートフォンはアプリケーションの開発や配布が可能という点においてパソコンに近い存在であることからも各業界が活用方法を模索しており、本格的な業務アプリの開発が始まっている。建設業界においてもスマートフォンを現場での情報端末として使えないかという試みが始まっており、今後期待される分野である。
取り組みやすいのはPDFビューアを利用した図面の閲覧で、設計図書や施工図をパソコンやスキャナでPDF化して取り込んでおくことで、手軽に図面を持ち歩けるようになる。iPhoneの場合はAppStoreからPDFビューアをダウンロードするだけでPDFファイルの管理ができるようになる。
また仕上検査や配筋検査、施工管理(進捗状況管理)、安全巡視といった業務に使える専用アプリが既に登場してきており、今後も増えていくと思われる。

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