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HOME >> Ⅶ 土木工事における最新の電子納品改定ポイントと現場の対応について >> 2. 電子納品等基準・要領・ガイドラインのポイント

2. 電子納品等基準・要領・ガイドラインのポイント

今回の対応で特に注目されるのは、二重納品排除に向けた対応が定義されたことだ。二重納品とは、施工中に受発注者間で交わした情報を電子データと紙資料で保管し、竣工図書として最後に受注者が発注者に納めていたことをそう表現していたが、今回の改定では、工事完成図書以外は「電子データで提出したものは、紙資料を提出する必要はない」ことを明記している。
CALS/ECがスタートした段階から問題になっていたものであるが、運用ルールを含めて明記されたことは、大きな改定点である。

(1)紙資料と電子データの分類について

図2-1 土木工事における工事関係書類の体系図
図2-1 土木工事における工事関係書類の体系図
出所:国土交通省発表資料

図2-1を見ていただければ分かるとおり、今回の改定では、「紙のみ提出」「紙または電子のいずれかで提出」「紙と電子の両方で納品」「電子のみ納品」の4種類に分けられている。
今までの「電子納品」は、どこまでを電子データとして提出するのか、今回のような分類を明確にせず、運用に任されていた部分が多くあるため、「電子納品」=「電子化納品」と勘違いしていた部分が大きかった。
今回のような明確な分類定義は、受注者の書類整理業務を省力化し、今まであいまいになっていた受発注者の考えが統一されるよい機会だと思われる。
それでは、今回特に「紙または電子のいずれかで提出」と記述されている「工事書類」と、「紙と電子の両方で納品」と記述されている「工事完成図書」の内容を中心に、データの作成方法やフォルダ構成について説明していく。

(2)具体的な電子納品フォルダ構成について
日本建設業連合会にて作成された資料では、受注者の工事契約期間における各フェーズで受注者が何をしなければならないかを、具体的な内容や電子納品として提出する場合のフォルダ構成を絡めて解説している。

図2-2 全体の流れ図
図2-2 全体の流れ図
出所:日本建設業連合会

図2-2の中で「契約図書」と「契約関係書類」の2つ(オレンジ)については、国土交通省から発表された資料の中にも記述されているとおり、受注者は「紙のみ提出」ということになっている。
よって、今回の電子納品等要領・基準・ガイドラインでは、電子データとして扱う書類ではないことを理解してほしい。

図2-3 従来の電子納品とのフォルダ構成比較表
図2-3 従来の電子納品とのフォルダ構成比較表

(3)工事書類の取り扱い
1)工事写真について
今回の改定では工事写真は工事写真のみが収められたメディア(CD-RもしくはDVD-R)での提出とし、従来のように電子納品フォルダの中の1つとして扱わないことになっている。
よって、工事写真は、工事書類として提出するメディアとは別となり、単独での提出となる。

図2-4 工事写真のフォルダ構成
図2-4 工事写真のフォルダ構成

現在利用している電子納品作成支援ソフトが、PHOTOフォルダだけ出力できる機能があるか否かを確認しておく必要があろう。
なお、実態としては非常にレアケースではあると思うが、銀塩カメラで撮影した工事写真があった場合は、工事書類として、プリントとネガで提出し、プリントやネガをあえて電子データとして提出するようなことは必要ないので、申し添えておく。

図2-5 工事写真整理時の電子と紙の取扱い方法
図2-5 工事写真整理時の電子と紙の取扱い方法
POINT POINTその3
写真データは工事書類としての位置づけでPHOTOフォルダだけ提出しよう。

2)工事帳票について
次に、工事帳票関係の対応について説明する。
工事帳票類(工事打合せ簿や材料確認、段階確認、確認立会願)などは情報共有システムを利用した場合に限り、電子データとして提出することになった。情報共有システムを利用するか否かについては、発注者が決めることになっており、事前協議などの打合せで、情報共有システムの有無を確認しておく必要がある。
今回の改定で、情報共有システムを利用するためのガイドラインが作成されているので、利用することになった場合は、必ず一読してほしい。

図2-6 情報共有システム活用ガイドラインの位置づけ
図2-6 情報共有システム活用ガイドラインの位置づけ

また、情報共有システムの選定は発注者が行うため、利用に係る費用(ID取得費用やASP運用費用)も発注者が負担することになった。これらについては、情報共有システムの運用を開始する前に、必ず受発注者で打合せを実施し、詳細を確認しておく必要がある。

POINT POINTその4
情報共有システムの利用費用は発注者が負担する。

情報共有システムを利用する場合は、工事帳票類の提出を紙資料としても提出することは必要ない。これら工事帳票類は、従来打合せ簿の鏡に押印があったため、電子データと紙資料の提出を求めている場合が多く見受けられたが、今回の改定はこのようなあいまいな運用を見直し、情報共有システムを利用した場合は、工事帳票類は電子データでの取り扱いを「正」とし、紙資料の提出まで求められないようになった。情報共有システムを利用した場合は、電子データとして出力されるフォルダ形式は以下のようになり、従来の電子納品と同じフォーマットで出力される。
なお、今回の情報共有システム利用については、現在国土交通省で取り組んでいる工事書類の簡素化の取り組みが根底にあり、その意味でも可能な限りこれらのシステムを利用することで、受発注者双方の事務手続きが少しでも簡素化され、受注者本来の施工管理業務に取り組める環境が強化されることを期待している。

図2-7 情報共有システムを利用した場合に出力されるフォルダ構成
図2-7 情報共有システムを利用した場合に出力されるフォルダ構成
図2-8 工事帳票の電子と紙の取扱い方法
図2-8 工事帳票の電子と紙の取扱い方法
POINT POINTその5
情報共有システムを利用した場合のみ電子データで提出する。

なお、工事帳票として取り扱う打合せ簿だが、今回の改定では打合せ簿帳票の項目として、「工種区分」の情報が追加項目として加わった。
これは、工事写真の概念と同じように、提出される品質・出来形管理資料のような枚数の多い「工事帳票」の整理、検索がシステム上で効率的に行えるように、打合せ簿管理項目に「工種区分」の情報項目を追加したものである。
管理区分ごとに工種区分(工種、種別、細別)の記入可否は異なる。管理区分ごとの記入可否の目安は、以下のとおりである。

図2-9 工種区分の記入可否の目安
図2-9 工種区分の記入可否の目安

実際に、情報共有システムとしてこれらの対応が実施されているシステムがまだ整備されていない可能性もあるため、工事帳票を情報共有システムにて利用する場合には、この点についても確認しておく必要があろう。

POINT POINTその6
情報共有システムで利用する「打合せ簿」の管理区分ごとに工種区分入力できるか否か、事前に確認すること。

(4)工事完成図書の取り扱い
1)工事完成図データの取り扱いについて
契約図書の中にある「設計図書」(従来の発注図)は、今まで発注図として電子納品データとして提出していたが、今回の基準等要領から削除された。重要な変更点として覚えておいてほしい。

POINT POINTその7
発注図ファイルは電子納品しない。

図2-2で青線で描かれている部分の発注図の貸与によって、完成図面の電子化方法が変わる点は、今回の改定での大きなポイントのひとつであるため、具体的な内容について以下に解説を行う。
発注図が以下のようなフォルダ構成及びフォルダ内のファイル名等が変更されているデータを受注者に貸与した場合は、受注者として完成図の作成を義務として行わなければならない。

図2-10 発注者が受注者に貸与する発注図面(CAD製図基準(案)に準拠)
図2-10 発注者が受注者に貸与する発注図面(CAD製図基準(案)に準拠)

受注者は発注者から発注図面データの貸与を受けた場合は必ずそのメディアの中を確認し、上記フォルダ形式で、必要なファイルが存在するか、また、フォルダに登録されているファイルが、工事の発注図として適切に変更されているかを確認しなければならない。

チェックポイント
①図面表題欄の変更
図面表題欄の変更
②ファイル名の変更
ファイル名の変更
③レイヤ名の変更
レイヤ名の変更
④図面管理ファイルの作成
図面管理ファイルの作成

これらCAD製図基準(案)に準拠した発注図データを受け取った場合は、受注者はCAD製図基準(案)に準拠した完成図データの作成義務を負う。
しかし、今回の改定では、CAD製図基準(案)に準拠した発注図データを発注者が貸与できない場合でも、受注者はCAD製図基準(案)に準拠した完成図データの作成義務を負っている。
CAD製図基準(案)に準拠した発注図データが貸与されない場合は、受注者は一からCAD製図基準(案)に準拠した完成図データの作成を行わなければならない。
そのため、今回の改定の中で、「貸与図が提供されない場合、CAD製図基準(案)に準拠したデータとして完成図データを作成する場合は、事前協議の中でその清算方法を協議し、別途完成図データにかかった費用を清算できる」こととなっている。
受注者としては、これら経費についてきちんと状況を確認・把握し、発注者と打合せる必要がある。

POINT POINTその8
完成図面作成に係る費用処理を明確にする。

2)台帳データや地質・土質調査成果、その他データについて
台帳データや地質・土質調査成果、その他資料データについては、必要な書類をそれぞれ、土木工事における電子納品等要領に掲げられているフォーマットに従い、工事完成図書として電子データを作成することになっている。
台帳データとしては、今回新たに「REGISTER」というフォルダを設けて、そこに電子データを保存するが、今までにない新しいフォルダであるため、現在お使いの電子納品作成支援ソフト等で、これらのデータが出力できるか否かを確認しておく必要がある。

図2-11 工事完成図書の提出フォルダ構成
図2-11 工事完成図書の提出フォルダ構成

作成するフォルダの中で「OTHRS」フォルダに納めるデータについてだが、工事書類の「OTHRS」フォルダに納めるデータとの区別があいまいな状況になっている。
これについては、事前協議の中で、受発注者ともに「工事完成図書」として納める「その他資料」と「工事書類」として提出する「その他」資料の区別について打合せしておく必要がある。注意点として覚えておいてほしい。

POINT POINTその9
工事完成図面に登録する「その他」資料と「工事帳票」の「その他」資料の区別を明確にする。合わせて「台帳」資料として登録するものが何かを事前に確認する。

ちなみに、道路工事完成図等作成要領に準拠して作成したデータについては、工事完成図書として提出するメディアに登録することになっている。
「OTHRSフォルダ」に「ORG999」というフォルダを作成し、そこに所定のフォーマットで作成された電子データを保存することになっている。詳しい内容については、道路工事完成図等作成要領を参照願いたい。

POINT POINTその10
道路工事完成図等作成要領のデータは、工事完成図書として提出するOTHRSフォルダに登録する。
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